雇われ社長じゃ落ち着かない!
よく耳にするもう一つの障壁は、それまでの会社の借入金に対する連帯保証人になるということ。
創業家としてそれなりの成功を収めて創業者利益があるようなオーナー経営者やその跡取り経営者と違って、一介のサラリーマンが社長のイスに座るなら、万が一借入金が返済できなくなった時には自宅をはじめコツコツと築いた個人資産を売却してでも返済しなくてはいけなくなるわけで、それは自分が新たな借入をする以上に躊躇を迫られるもののようです。
というわけで、社内で同族以外の後継者を探すというのは至難の技。そこで最近、俄然注目を集めているのが、M&Aによる事業譲渡です。
この場合、事業譲渡によって事業は継続され、社員の雇用は守られるのですが、たいていは自社よりも少し規模の大きい、異なる地域の企業の傘下に入るということが多くなります。それにより、実質的に地元企業でなくなると同時に、資本が入れ替われば銀行取引は当然そちらの企業の取引銀行に移ることになります。
すなわち、地元としては空洞化の進展を黙って見送る意外に、手の出しようがないというわけなのです。
そうなると問題解決のポイントは、いかに同族の後継者をつくるかです。有識者会議の当日、出席した銀行、弁護士、税理士、社会保険労務士、コンサルタントなどの中小企業経営にかかわる人たちが口を揃えていたのは、「物理的な同族の後継不在の場合はやむなしとしても、同族に後継候補がいるのなら、廃業やM&Aに向けて動き始める前に血縁での事業継承の可能性について、もっともっと掘り下げるべきではないのか」ということでした。
確かに、経営者から「息子たちはうちを継がないので、廃業するか買ってくれる先を探すかしたい」と結論ありきで周囲に持ちかけられた場合、銀行も士業やコンサルタントも後継の可能性が本当にゼロか否かを十分検証せずに話を進めてしまう傾向が強いように思います。