2014年、香港で創業。ユーザー国籍100か国以上、月間2500万人以上が利用している旅行者の体験予約サイトを展開しているKlook(クルック)が、いよいよ日本に本格参入する。
目覚ましい勢いで、成長を続けてきたKlookはこのほど、ソフトバンクグループほか投資家からの資金調達を成功させて、日本のマーケットでイベントの参加や、映画やドラマで話題になったホットスポットへの巡礼といった「体験旅行」を提供する。
同社の最高収益責任者(CRO)で、グローバル・マーケティング、パートナーシップ(業務提携)、ディストリビューションを統括するAnita Ngai(アニタ・アイ)さんに話を聞いた。
香港2泊3日、「完全キャッシュレス旅」を楽しめる
―― Klookは「体験旅行」「体験サービス」を提供しているとのことですが、具体的にサービスの特徴、強みを教えてください。
アニタ・アイさん「Klookのサービスの最大の特徴は、旅行『体験』にフォーカスしているという点です。Klookは、航空チケットとホテル以外の、ほぼすべての体験サービスを、モバイルで予約することができます。たとえば旅行者が、日本でディズニーランドやUSJ(ユニバーサルスタジオジャパン)に行きたい時に入場券を予約したり、コンサートや利き酒ツアーなどの手配ができたりします。
海外各地の空港から中心街に行くまでの鉄道の切符や、Wi-Fiがどこでもつながるよう携帯用SIMの予約までもできるのです。私の知り合いが香港を旅行した際、『Klookを使ったら、空港に降り立ってから帰国するまでの2泊3日、一切キャッシュを使わずに旅ができた』と話していました。
Klookのサービスは、スマートフォンのアプリを使って、いつでも好きな時に即時予約ができ、QRコードやEチケットを見せるだけでアクティビティが利用できます。その便利さと、それを可能にするテクノロジーがKlookの強みだと思います。また、500万件を超える利用者からのリアルなクチコミもKlookの信頼度の高さを物語っています。
現在では、世界で270か所以上の10万種類以上の体験サービスを取り揃え、9言語、41種類の通貨に対応しており、多くの旅行者のオリジナルな旅作りをサポートしています」
―― Klookの「体験サービス」には特典はないのですか。
アニタ・アイさん「Klookが提供しているサービスの多くに割引がありますが、割引がない場合も、何らかの特典を設けています。行列に並ばなくてよい『スキップザライン』というサービスもその一つ。長い行列ができるようなアトラクションでも、『Klook』と書いてあるゲートから、並ばずに入場できます。
私たちは、決して割引を行うプラットフォームを運営しているのではなく、お客様の利便性、安全・安心な旅先の体験、旅先でもきちんと計画された旅を楽しんでいただくという点を大切にしたいと思っています」
―― Klookは、すでに世界20拠点で展開しているそうですね。日本でのサービス、日本人に向けたサービスの現状はどうでしょうか。
アニタ・アイさん「現在、最も大きいマーケットはアジアですが、じつは日本のビジネスも大きく、インバウド(海外からの旅行者向け)では、もう何年も日本で事業を行っています。このたび、アウトバウンド(海外に行く日本人)向けのサービスにも注力することを決め、ウェブサイトやアプリでの日本語サービスを開始しました。アジア以外では特にヨーロッパの事業を拡大しており、新たにスカンジナビアやイタリアやスペイン、ギリシアなどの拠点が加わっています」
旅行は偶然の出来事もいい思い出になる
―― 海外から見て、日本人旅行者の特徴や印象を教えてください。
アニタ・アイさん「私が見る限りでは、典型的な日本人の旅行者は、他のアジアの旅行者と比べて、計画性が高い人が多いです。たとえば香港では、だいたい旅行前の1週間に計画を立てる人が多いのですが、日本人の旅行者の多くは2、3週間前から、時には1か月前から計画を立てはじめています。
Klookの日本のお客様層としては、女性の方が若干多く、年齢層で見ると30~40代が多い。これは世界の平均より、やや高めです。しかし、海外旅行は20代がけん引しているというデータがある一方、団塊世代の人口が多く、購買力も高いですから、こういった方たちも取り込みながら、より幅の広い層の皆さんにサービスを提供していきたいと思います」
―― 日本人旅行者の海外旅行というと、パッケージツアーが主流です。Klookのサービスは「それぞれのオリジナルな旅行をつくる」という、日本人旅行者にとっては新たな旅行の提案ですが、受け入れられると思いますか。
アニタ・アイさん「はい、受け入れられると思います。現在、KLOOKを利用いただいている旅行者は、比較的若年層が多いのですが、今の若者は、旅行中は人に合わせずにもっと柔軟に決めたいと考える人が増えています。これは世界の若者の傾向ですが、日本の若者もそれほど変わらないと思います。
じつはパッケージツアーで行くような場所に、Klookを利用して行くことは簡単なんです。有名な旅行先や人気の観光地はほとんどカバーされていますから。逆に、直前に行き先を決めたり、通常のツアーにないようなアトラクションなどに挑戦したりというようなチョイスも、Klookでは自由に選べますので、両方のニーズをカバーしているのです。年齢が高めの人でも、安心してKLOOKを利用していただけるはずです。
でも、旅行での偶然の出来事が後々強く思い出に残ったりすることって、ありませんか。あまり期待していなかった分、楽しめたという話もよく聞きます。自由旅行のいいところを取り入れるというふうに考えていただければと思います」
―― 日本市場への参入のきっかけ、どのようなチャンスがあると思いますか。意気込みをお聞かせください。
アニタ・アイさん「もっと早く日本に本格参入したかったというのが正直なところです。時間がかかった理由の一つは、日本人はサービスレベルへの期待が高いので、時間をかけて準備をしたかったということ。もう一つは、今年9月のラグビー・ワールドカップや2020年の東京五輪・パラリンピックと、日本では多くのイベントが目白押しです。旅行業界にとっては商機ですので、日本に本格参入して、こういったイベントの周辺で発生するさまざまなニーズを取り込みたいという狙いがありました。
香港や他の国では、ホテルとタイアップしてKlookのお客様だけの特別なサービスを提供したり、イベント会社と協力して有名歌手のコンサートチケットの独占販売をしたり、さまざまな取り組みを行っています。日本でも可能性は無限にありますので、本格参入を契機にKlookでしか経験できない、独自のサービスを提供していきたいですね」
(聞き手:戸川明美)