一見、無関係に見える金融商品も、一方の商品が上昇すれば、それに連動して別の金融商品が値動きする傾向がある。
よく知られている例では、日経平均株価が上昇すると、ドル円相場も上昇して円安になりやすいという法則や、株価下落のときに上昇する傾向がある金(ゴールド)などがそれだ。
ジョージ・ソロス氏は金で大儲けした
一般的に、世界経済の先行きが不安視されるようなとき、金は買われて価格が上昇する傾向がある。世界的な株安が起こると、連動して金価格は上昇しやすい。
このことを利用して、株式投資やFX(外国為替証拠金取引)と同じように、金をトレードする投資家もいる。世界三大投資家に数えられるジョージ・ソロス氏も、その一人だ。
2016年6月23日、世界を揺るがす事件が発生した。メディアの事前予想を裏切り、英国は国民投票の結果、欧州連合(EU)を離脱することになったのである。これを受けて、欧州をはじめとする世界中の株式市場が急落。また、ドル円相場は一時1ドル99円台まで下落して円高が進行した。
英国経済への悲観的な見通しから、英ポンドは大幅に売られ、ポンド円相場は1日で約27円もの記録的な下落となっていた。
1992年9月16日のポンド危機で英ポンドを売り浴びせ、「イングランド銀行を破たんさせた男」として知られる伝説の投資家ジョージ・ソロス氏は、ひと晩で10億ドル(1000億円)以上を稼ぎ出したといわれている。
ところが、2016年のEU離脱決定の際は、英ポンドを売ってはいなかったようだ。それどころか、英ポンドを買い持ちにしていたため、損失を計上したとされる。
英ポンドのトレードでしっぺ返しを食らったソロス氏だったが、その期間の損益はプラスだったようである。なぜか――。世界経済の先行きに対し不安視していたため、金価格の上昇を見越して、金採掘会社のETF(上場投資信託)を購入していたためだ。
2016年6月の金価格は、世界経済の先行きに対する懸念から、毎週上昇していた。だから、ソロス氏は英ポンドの買い持ちで損していたにもかかわらず、金で大儲けしたため、トータルでは利益を上げることができたのだ。