「印刷物」は特定分野で成長中
もう一つのテーマは「アナログな『発想』の逆襲」。デジタル化の広がりにより、さまざまな産業が影響を受けたものだが、米英ばかりか日本でも共通しているのは、出版や新聞などプリントメディアの企業が大きく揺さぶられたことだ。
だがデジタル化が進んで以降、デジタルオンリーでベストセラーになった例はなく、新聞、雑誌などでもデジタル版が成功したという例はあっても、デジタル事業に転換して紙媒体並みを実現したなどという例はほとんどないという。
それどころか、新聞媒体はともかく、「印刷物は持ちこたえているばかりか、特定の分野では成長を遂げ、新しい出版物や、デジタル出版物のアナログ版を生み出している」ほどなのだという。「現時点では定期刊行物で何十億も利益を出す企業はほとんどないが、低コストで即時配信できるデジタル出版物の輝かしい成功物語がほんの一面にすぎないことがますます明確になってきた」ものだ。
流通や広告をめぐってはまだ、大手出版社に合わせた、いわば、時代遅れの枠組みがそのままで「恐ろしく無駄が多い」まま。雑誌市場のモデルは変わっていないために、かつて部数を誇った雑誌のなかには身売りするものも出てきた。だが市場をつぶさに見てみれば、たとえば米国内では、毎月平均20の雑誌が創刊されているという。「作成と販売の方法が新しいモデルにシフト。ポストデジタル経済で機能するように設計されたモデルに変わっている」のだ。