新たに導入「コンセッション方式」では民営化はムリ?
水道料金の「格差」は、水源、水道事業にかかる費用、水道の利用量など、さまざまな要因によるものだが、ただ一つ確実に言えることは、水道料金は間違いなく値上がり傾向にあるということだ。
さらに、公共事業としての水道サービスは、低下する可能性を秘めている。水道管の更新費用は、水道料金が原資となっているが、水道使用量が減少し収入・収益が減少すれば、当然ながら水道管の更新は難しくなる。
たとえば、1本の本管から地域100軒に供給されていたとする。過疎化により、この地域が10軒に減った場合、水道管更新のための1軒あたりの負担は10倍になる。もし過疎化がさらに進んで地域世帯が5軒あるいは1軒になった場合、水道管の更新費用を負担することが果たして可能だろうか。1軒ならば、言うまでもなく一挙に100倍の負担がのしかかるのである。
こうした日本の水道事業の現状と将来の不安に対する打開策として登場したのが、「水道事業の民間運営」だ。その最大のポイントは「コンセッション方式」が導入されたことにある。
民営化とは、設備、土地を含め事業全体を民間企業に転身させることだが、正確に言えば、「コンセッション方式」は民営化ではない。水道管などの所有権を移転することなく、水道事業の運営のみを民間企業に任せる方式だ。
「コンセッション方式」を導入すれば、水道事業の運営権を民間企業に売却することが可能になるため、自治体は売却代金により水道事業の赤字などを削減することが可能となる。また、水道管関連の工事コストの削減、あるいは新技術を導入した水道事業の運営などによるコスト削減にも期待がかかっている。
事実、宮城県は2021年度に、水道事業の運営権を民間事業者に委ねる予定を打ち出している。これにより、20年間で水道事業にかかる経費を最大546億円削減できると試算している。
しかし、「コンセッション方式」の導入はメリットだけではない。水道事業の経営主体が民間企業になるため、事業計画、施策などに対する決定権は民間事業に移る。当然、民間企業が事業を営む以上、採算、利益が重視される。つまり、それは水道水の安全性低下や水道料金の上昇につながりかねないのだ。