新1万円札の「顔」に決まった、「日本の資本主義の父」とされる実業家の渋沢栄一。その出身地である埼玉県深谷市が、吉報に沸いている。
JR深谷駅前の渋沢栄一像を、スマートフォンで撮影する人が続出。人気沸騰中の市公認のゆるキャラ(R)「ふっかちゃん」に続けとばかりに、盛り上がりを見せている。
新1万円札「渋沢効果」で観光客を誘致
「祝!渋沢栄一翁、一万円札ヘ! もう、ドキドキがとまらないよぉ~」――。2019年4月10日、歓喜に沸く「ふっかちゃん」の姿を、動画とともにツイートした。
発表から1日経っても興奮冷めやらぬ深谷市民。過去に渋沢栄一が新札肖像画候補に挙がりながらも、偽札防止の観点で「ヒゲ」がなかったことから落選した経緯もあり、感慨ひとしおといったところ。
深谷市では、小学校から道徳の時間や郷土かるたなどを使って渋沢翁の偉業を学んでいることから、子どもから大人まで知らない人はいないと言っていいほどの存在感だ。
深谷市内では高い認知度を誇る渋沢翁だが、全国的には今ひとつ。そうした声が漏れるなか、深谷市では早くも「観光資源」への期待が高まっている。
じつは、新1万円札は表面の渋沢栄一とともに裏面にある東京駅も、深谷市との「縁」は深い。渋沢翁は第一国立銀行(現・みずほ銀行)の創業をはじめ、約500もの会社設立にかかわっていることで知られるが、ここ深谷市にも2006年まで、120年間操業していた日本煉瓦製造(株)があった。
渋沢翁が自ら創業した会社で、そこで製造されたレンガが、東京駅丸ノ内本屋や旧東宮御所(現・迎賓館赤坂離宮)などに使用されているのだ。
日本の近代化に寄与したレンガだが、時代とともに需要が減少したことや安価な外国産レンガが流入したことでその役割を終え、現在は「旧煉瓦製造」資料館として深谷市が管理、公開している。
工場の一部として残る「ホフマン輪窯6号窯」は補修工事中で現在は見学できない(2023年の公開予定)が、深谷市文化振興課は「ゴールデンウィーク中は、資料館を毎日公開しています。(渋沢ブームで)来場者が増えることを期待したいです」と話す。