平成31(2019)年4月1日、新しい年号が「令和」と決まった。
5月1日には新天皇が即位する。これからしばらくの間は、おめでたいとか、この際、世の中を景気づけようとかいうので、「万歳三唱」が列島のあちこちで聞かれそうな気がする。
安倍首相の「天皇陛下万歳」が物議
「万歳」とは、そもそも「万年」を意味する中国発祥の言葉で、皇帝の長寿を臣下が願うときに唱えたものだそうだ。
それはそれとして、私たちが何かの折に万歳三唱する姿は、どこかダサくはないか。人それぞれに感じ方は違うだろうけど、「バンザーイ」と叫びながら両手を三度、頭上に持っていくのは、何やら不格好ではないだろうか。
万歳という単語には芳しくない意味もある。「もう万歳だ」は「お手上げの状態」とか「もうどうにもならない」といった意味だ。企業なら「倒産」である。
また、万歳の前に「天皇陛下」がつくと、物議をかもしたりもする。たとえば、この2月24日に政府主催の「天皇陛下在位30年記念式典」が国立劇場で行われたが、安倍晋三首相は閉会にあたり、自らが音頭を取って「天皇陛下万歳」を三唱した。
天皇と同い年のジャーナリスト矢崎泰久氏が、その時の様子を雑誌「週刊金曜日」に次のように書いていた。
「NHKテレビで映し出された天皇明仁の顔は苦渋に満ち、かたわらの皇后美智子はうつむいたままだった」 「かつて戦争中の日本男子は、一銭五厘の赤紙で召集され、『天皇陛下万歳』の歓呼の声に送られて出征した。戦場で死ぬ時は『天皇陛下万歳』を唱えることを強制された」 「象徴天皇に『天皇陛下万歳』は頭上から冷水を浴びせるに等しい」
僕も矢崎さんほどではなかったが、この席での天皇陛下万歳の三唱はちょっと異様に感じた。
平成の時代が戦争なしで終わることを天皇は何よりも喜んでいるという。それだけに、万歳三唱によって天皇の脳裏には、昭和の時代の戦中のことがよぎったのではないだろうか。