「終わりよければすべてよし」も科学的に正しい
旅行に行った後、思い出について語るのは楽しいものです。ところが、帰路でひどい渋滞に巻き込まれていたり、仲間同士がトラブルになっていたりしたらどうでしょう。最悪の思い出しか出てきません。
Aさんというプロ野球選手がいたとします。新人の頃はミスばっかりでしたが、数年後に成績を残すようになります。そうなれば、新人の頃のミスなんてどうでもよくなります。
これらのエピソードは「終わりよければすべてよし」です。
ノーベル経済学賞を受賞したプリンストン大学のダニエル・カーネマン氏は、「ピーク・エンドの法則」を発表しています。これは、私たちはある過去の経験を、絶頂(ピーク)時にどうだったか。そして、どう終わったか(エンド)によって判断するという実験です。証明方法は、次のようなものでした。
人々を2つのグループに分け、大音量の不快な騒音を聞かせました。Aグループにはずっと同じ騒音を、 Bグループには、ときたまAグループよりひどい音も混じる一定ではない騒音で.最後は少しましな音を聞かせました。すると、Bグループのほうが、Aグループよりも不快さの評価が低かったのです。ひどい音を聞かされた「ピーク」よりも、それほどではなくなった「エンド」という記憶が不快感を和らげたと考えることができます。
人間の記憶は終わりの印象だけが強く残る傾向があります。「終わり」を無理やりにでもよい記憶と結びつければ「幸せ体質」になるのかもしれません。