社員の永年勤続促す施策も
たとえば、コーヒーショップチェーンで知られるスターバックスのインターナル・コミュケーション(IC)経営の特徴は、確定拠出年金や大学の学費負担などの福利厚生施策。社員の会社信頼度を高め、有能な人材に長く勤務してもらうのが狙いだ。そのことに関する情報発信や、コミュニケーションにぬかりがないよう配慮している。
航空機メーカーのボーイングにはフルタイムで勤務する「コミュニケーター」を配置。ボーイングストーリーという社内ニュースを、社内専用の発信ツールのアプリ「ボーイング・ニュース・ナウ」で社員に伝える。1週間に15~20本の記事を掲載、ほかに、同10~15本の動画投稿もある。「ナウ」のコンテンツは、内容によってはフェイスブックなど外部のSNSに投稿が可能。同アプリは社員の信頼度維持に非常に効果があり、社内では高い評価を受けている。
世界にハンバーガーショップのチェーンを展開するマクドナルドも、社員専用SNSを設けるなどIC活動に熱心だ。なかでもユニークな施策は、本社があるイリノイ州オークブルックに近い同州最大都市シカゴで、空いているビルを借りて、そのビルで同社の10年後の姿を表現したこと。そこに世界中の社員を招待して未来の様子をみてもらった。「CEO(最高経営責任者)がビジョンを語ることはいくらでもできるが、それを実際に目で見ると、インパクトは大きい。CEOのビジョンがもっとも強く全世界の社員に伝わったタイミングとなった」。
日本では近年、新卒社員が勤続年数が浅いうちに辞めてしまうことに頭を悩ませている企業が少なくない。そうした対策としてもIC経営が有効となる可能性がありそうだ。
「人を活かし組織を変える インターナル・コミュニケーション経営 経営と広報の新潮流」
清水正道編著、柴山慎一、北見幸一、中村昭典、佐桑徹、池田勝彦、佐藤浩史著
経団連出版
税別2000円