英国が欧州連合(EU)離脱問題に揺れるなか、英国内に展開する日系企業は707社、5485拠点にのぼることが東京商工リサーチ(TSR)の調査でわかった。2019年3月25日の発表。
英国進出の日系企業707社のうち、拠点を管轄する企業の支配権(議決権、所有権)を50%以上所有する企業またはグループの親企業の本社は、東京都が最多の404社で、次いで大阪府の81社だった。
現地拠点の産業は、運輸業が1408拠点と最も多く、次いで小売業の1207拠点、サービス業の1010拠点など多岐にわたっている。
英国進出の日系企業は707社
英国のEU離脱は2019年3月29日に離脱期限を迎えたものの、「合意なき離脱」を回避するため、一たん延期された。しかし、安心できない状況は今なお続いている。
みずほ銀行の日系企業進出状況(2019年2月)によると、現在、英国内に展開する主な企業は、トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車の自動車メーカーのほか、アステラス製薬、日通、パーク24、ソフトバンク、日立製作所、パナソニック、住友ゴム工業、日本電産、JR東日本、三井物産などがあげられる。
英国がEUから離脱すると、これまでなかった関税が発生し、通関手続きに混乱が生じる可能性がある。これはすべての幅広い産業で影響を受ける見込みだが、とりわけ日系企業で、753拠点を展開する製造業の生産体制への影響は大きい。
すでにホンダが撤退を表明。自動車メーカーを中心に、英国での生産見直しの動きもあり、今後は他の業界にも広がる可能性がある。
また、532拠点を構える金融・保険業では「単一パスポート」の適用失効による事業継続のリスク回避に向けた動きが活発化。一部の証券会社や金融機関はドイツやオランダなどで証券業の免許を取得するといった動きがある。世界有数の金融都市、シティーの「地盤沈下」は避けられそうにない。
さらに、英国のEU離脱でポンドやドルの調達コストが上昇した場合、進出企業の収益にも影響が出るだろう。とくに日系メーカーの現地拠点に部材納入の目的で英国に進出した企業は、生産計画の見直しが現実味を帯びてくると、進出メリットが喪失。拠点での業績悪化が危惧される。
中小企業ではますます深刻となり、なかでも日本国内より海外での売上高比率が高いケースでは、事業戦略の根本的な見直しが必要になるかもしれない。