「1000年先の人類、昆虫にまで思いをはせよう」
一方、熱心に自分の夢を語る社長は、特に中小企業に多かった。
再生可能エネルギーの発電などを展開するシン・エナジー(神戸市)の乾正博社長は、3人の新入社員を前に時間のスケールが大きい夢を語った。
「未来の子どもたちからの『ありがとう』のため 生きとし生けるものと自然が共生できる社会を――というわが社の経営理念は、1000年先に人類は地球で暮らしていけるのか、という深刻な懸念から生まれた言葉です。皆さんは人類だけでなく昆虫や動物も含めた環境について考えてください。さて、『働く』という字は、『傍楽(はたらく)』という字を当てれば、『周りの人が楽(らく)になる』『周りの人を楽(たの)しくする』という意味を込めることもできます。日々の仕事を楽しんで、若い感性を仕事に生かして下さい」
「皆さん元気ですか~?」と8人の新入社員に呼び掛けたのは、業務用厨房機器を製作するタニコーテック(福井県大野市)の高柳一則社長だ。
「当社は、夢を実現する会社です。皆さんの斬新なアイデアは明日からでも発揮できるはずです。私は昨年の入社式で『ロボットや人工知能を取り入れた未来の厨房を創りたい』という夢を話しました。それが早くも今年2月に開催された展示会で出品することができました。ロボットがハンバーガーやたこ焼きを調理したのです。夢を描き、目に見えるカタチにする。これぞタニコーイズムです。楽しくワクワクする未来を一緒に創っていきましょう!」
ANA(全日空)グループの片野坂真哉(かたのざか・しんや)グループCEOもこんな若き日の夢を打ち明けた。
「私は、入社して40年目になります。新入社員の夢を会社の社内報に寄せた事があるのです。私の夢は『全日空は、今は国内線しか飛んでいませんが、いつの日か宇宙旅行に進出しているかもしれない』でした。夢は、努力すれば必ず叶うのです。入社本当におめでとう」
「命」と「愛」の大切さを訴えたのが、全国に保育施設を展開するポピンズグループ(本社・東京都渋谷区)の轟麻衣子社長だ。保育士を中心に女性社員が多いとあって、初の「託児室付き」の入社式となった。
「お子様を預かるということは、その一人ひとりの命を、責任を持って預かるということです。そしてお子様の成長を促して輝く人生へと導きます。お子様を育てながら、そのお母様、お父様も応援するのです。働くお母様が安心して仕事ができるよう寄り添うのです。この根底にあるのは『愛』です。『愛』こそがポピンズのエンジンなのです」
入社式の挨拶には、社長の人柄とともに、企業文化も表れるようだ。(福田和郎)