歴史に残るあの「名セリフ」、どっちの英訳がいい?
日米の野球界で28年間プレイをしたイチロー選手。引退試合となった東京ドームでのアスレチックス戦では、試合終了後も多くのファンが球場に残り、スタンディングオベーションで偉業を称えました。
試合後の記者会見で、引退の決断に「後悔はないのか?」と記者から問われたイチロー選手は「今日の球場でのできごと、あんなものを見せられたら、後悔などあろうはずがありません」と返答。この、「後悔などあろうはずがありません」のひと言が、翌朝の新聞のトップを飾りました。
この、歴史に残るであろう「名セリフ」を、英語では何と言うのでしょうか?
実際に世界に流れた「英語訳」を比較してみると......。
I regret nothing
(後悔するものは何もない)
How could I possibly have any regrets?
(どうすれば、後悔などできるのでしょうか?=後悔などできはしない)
伝えている事実は同じですが、訳によってこんなにもニュアンスが異なるのですね。
私は、「後悔しようと思ってもできない」というニュアンスを含む後者のほうが、イチロー選手の心をうまく表現しているように思えます。みなさんはいかがでしょうか。
では、「今週のニュースな英語」を。イチローの歴史的名言から「How could I possibly~」(どうして~などできようか=~できない)を取り上げます。「~できない」を強調したいときに使う反語表現です。
How could I possibly forget?
(どうすれば忘れることができるのか?=絶対に忘れない)
How could I possibly love you more?
(どうすれば、あなたをもっと愛することができるのか?=これ以上愛することはできない)
How could I possibly anticipate its evolution?
(どうすれば、進化を予測することができるのか?=進化を予測できない)
イチロー選手が残してくれた偉業は、記録だけではありません。これからも、数々の「イチロー語録」を届けてくれることを期待したいと思います。(井津川倫子)