「可愛い子には旅をさせよ」という言葉があるが、若者の海外旅行離れが深刻だ。「カネがない」「治安が悪くて怖い」などというのが理由だというが......。
せっかく海外からの旅行者が増えているのに、これでは「本当のおもてなしができない」と、観光庁や日本旅行業協会が中心になり、20歳の若者をタダで海外旅行に行かせる企画、題して「『ハタチの一歩』~20歳 初めての海外体験プロジェクト」を開始した。
観光庁と日本旅行業協会が「20歳」200人を後押し
観光庁によると、2018年の訪日外国人は3000万人を超え、過去最高を記録した。一方、海外に旅行する日本人は約1800万人と前年より微増したものの、訪日外国人の躍進ぶりに比べれば横バイ状態が続いている。なかでも20代若者の海外旅行離れが深刻で、1996年の462万人をピークに2014年には269万人に落ち込み、ずっと低水準が続いている。18年間で4割以上も減ってしまったことになる。
どうして若者は海外旅行に行かなくなったのか? J-CASTニュース会社ウォッチ編集部の取材に応じた日本旅行業協会海外旅行推進部の薦田祥司(こもだ・しょうじ)さんは、こう説明する。
「観光庁のアンケート調査によると、3つの理由が大きいですね。7~8年前にIS(イスラミック・ステート)などのテロが頻発して治安が悪くなり、外国は怖いという漠然とした不安があること。次におカネがなく、どうせ費用をかけるならデジタルに使いたいという意識が高いこと。最後に海外は言葉が通じないから不便だそうです。言葉の問題は昔からあったはずですがね...」
と笑った。
そこで、観光庁と日本旅行業協会が中心になり、ANA(全日空)やJAL(日本航空)、成田国際空港、関西エアポート、中部国際空港などの運輸関係事業者、各国の駐日大使館などの協賛を得て、「ハタチの一歩」プロジェクトを始めた。
無料で海外旅行を提供する対象者は、2019年4月2日時点で満20歳、これまでに一度も海外に行ったことがなく、日本国籍を持っている人だ。計200人を募集する。旅行代金は「0円」だが、燃油サーチャージ、海外空港諸税、国際観光旅客税、国内空港施設利用料などは別途徴収するう。
海外を知らずに外国人への「おもてなし」はできない
渡航先は、香港、マカオ、ベトナム、タイ、マレーシア、フィリピン、グアム、中国(杭州・上海)、韓国(ソウル・釜山)、台湾(高雄・台北)などアジア諸国ばかりだ。4泊5日を予定しており、通常のツアーなら10万円前後の料金がタダになるわけだ。実際に行くのは2019年10月~12月。日程は未定だが、レジャーや観光の要素を少なくてして、文化・スポーツ体験やボランティア、現地の若者との交流など、10人~20人ほどのグループに分かれ、体験・勉強型のツアーにするという。
その目的や狙いを、薦田さんは
「若い人に海外旅行を通じて国際感覚を養ってほしいからです。そして、日本の良さに改めて気づいてもらいたい。これだけ訪日外国人が増えているのに、海外を知らずして彼らを受け入れて、本当にもてなすことなどできません。そして、海外は怖いところではない、日本を出るのに面倒くさい手続きも必要ない、気軽に海外に行けるのだとわかってほしい。いわば、『初めの一歩』の背中の後押しですね」
と語る。
募集は3月22日から専用ホームページで受け付ける。
応募が200人を超えたらどうするのか。薦田さんはこう語った。
「エントリーシートに海外に行き何をしたいか書く欄があります。それを読ませていただきます。はっきりした目的とやる気のある人を歓迎します」
今回の試みが成功し、来年以降も協賛企業・団体がつけば、次の渡航先はアメリカ、ヨーロッパ、オセアニアにする予定だという。(福田和郎)