グローバル経済の中で、現状維持は後退
ひょっとすると読者の中には、ここまで読んで「ちょっとくらい賃金が下がったって失業率が低いのならそれでもいいだろう」と思った人もいるかもしれない。
もし、世界に日本しかない状態だったら、それでもよかったかもしれない。でも、世界には日本以外にも多くの国があり、より豊かになろうと日々しのぎを削っている。
そんな中で、成長より「今雇っている人を雇い続けること」を最優先にする国は、現状維持にすら失敗するに違いない。
皆が歩き続けているなか、一人だけ歩みを止めるようなものだからだ。
失われた30年と言われつつ、奇妙なほどに安定した社会を日本は維持してきたものの、やはり失われたものは大きかったというのが筆者の見方だ。(城繁幸)