iPhoneが日本で流行ったワケ それは「ちょいバカ戦略」の成功だった(気になるビジネス本)

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「ちょいバカ戦略 意識低い系マーケティングのすすめ」(小口覺著)新潮社

   日本人ほど「iPhone(アイフォーン)」好きは、世界でも稀らしい。国内出荷台数は1600万台を超え、シェアは半数を超えている(2017年度、前年比2.4%増の1626.1台。MM総研調べ)。

   発売は2008年。今では考えられないが、その当時は「日本ではスマホは流行らない」というのが大方の見方だったという。それが、誤りだったのは「意識低い系」の人々の視点を欠いたためだった。

  • iPhoneは意識低い系マーケティングでヒット
    iPhoneは意識低い系マーケティングでヒット
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女子高生が火をつけた「iPhone」

   「意識低い系」とは、たとえば、すぐに「多数派」に迎合してしまうような「意識が低い」とされる価値観や視点を、無意識のうちに採り入れられることができる人を指す。

   iPhoneでいえば、アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズが、その「意識低い系」の人を取り込むにあたり、その立ち回りが絶妙だったらしい。

   ジョブズがiPhoneで「意識低い系マーケティング」を、どのように成功させたのか――。それはまず、使いやすさや音楽プレーヤーなどの多機能性をアピールして、いわゆるアップル信者や新しい物好きを取り込んで、シェアやプレゼンスを高めて、「みんな使っている」状況を現出した。

   製品が流行するサイクルには、一つの理論がある。それによると、「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4段階をうまく移行してきたものが、ヒット商品と呼べるものになるのだそうだ。

   それぞれ購買層が異なり、導入期のそれは「イノベーター(革新者)」とよばれる、新しいモノならなんでも飛びつく人たちで、成長期を構成するのは「アーリーアダプター(初期採用層)」。こちらは流行に敏感に反応するグループで、いずれも「意識高い系」にあたる。

   このあと、成熟期に購買層となるのは、便利と評判なもの、流行っているものを欲しがる「意識」が「低い」とされる「マジョリティ」。そして、成長期と、この成熟期の狭間には「キャズム」と呼ばれる大きな溝があり、ここを超えるなんらかのバネとか仕掛けがうまくいったときに、ヒット商品になるわけだ。

   iPhoneでいえば、最初に発売された「3GS」や「4」に「意識高い」ユーザーが飛びつく一方で、「意識高い系」のジョブズ自らは、あえて意識の低いレベルまで降りてきて、iPhoneの魅力や使いやすさをプレゼン。日本では、友達と同じもの、他人と同じものを好む、「みんなが使っているものがいい」という女子高生がはからずもサポーターになり、大衆のユーザーを増やしていき、一大勢力になったという。

   もちろん、専門家らの評価も高く、いわゆる「通」にはウケがいいが、それ以上は広がらずに残念な存在になってしまうのは、ヒット商品の成長の過程で止まってしまうからなのだ。

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