フランスで、マクロン政権に抗議する「黄色いベスト運動」のデモが続いています。毎週のように行われているデモは参加者の一部が暴徒化。高級ブランド店や老舗カフェで放火や商品が略奪される映像が世界中に流れて衝撃が走りました。
この「黄色いベスト運動」、じつはあの「人気映画」との共通点があるのです......。
高級カフェ、あの「フーケッツ」も炎上!
2018年末から続いている「黄色いベスト運動」。参加者が黄色い蛍光チョッキを着ていることが由来ですが、フランス語では「mouvement des gilets jaunes」になります。
英語に直訳すると「movement of yellow vest」(黄色いベスト運動)ですが、報道を見る限り「yellow vest protests」(黄色いベスト抗議、デモ)という表現が一般的に使われています。
「movement」よりも強い意味の「protests」(抗議集会、デモ)のほうが、ダイレクトに伝わるからでしょうか。仏語の「運動」が、英語になると「デモ」に変わっているのがおもしろいと思いました。
先日の大規模デモでは放火や略奪が行われ、「BOSS」や「ロンシャン」といった高級ブティックが軒並み破壊されて、商品を略奪されるなどの被害に遭いました。
なかでも、シャンゼリゼ大通りの老舗の高級カフェ、あの「フーケッツ」が放火されて炎上する映像にショックを受けた方も多いことでしょう。
Le Fouquet's restaurant is seen as symbolic of French power
(レストラン「フーケッツ」は、フランス権力の象徴とみなされている)
be seen as~:~とみなされる
symbolic:象徴的な
「フーケッツ」といえば、フランス文化を象徴する歴史ある名店ですが、ミッテラン元大統領やサルコジ元大統領が好んだことから「権力の象徴」ともみなされていました。残念ながら今回は、「打倒エリート」を掲げるデモ隊の標的になってしまったようです。
大切な文化を失ってしまったようで、世界中に喪失感が広がっています。
「007」も環境に配慮 とうとうEVが登場
この「黄色いベスト運動」は、もとはと言えば、環境問題に熱心に取り組むマクロン仏大統領が、脱炭素社会を実現するためにガソリンや軽油への税金を引き上げたことが発端でした。
The yellow vests protests initially start because of fuel tax rises
(黄色いベスト運動は、当初は、燃料税の引き上げから始まっている)
Initially:当初は、初めは
fuel tax:燃料税
公共交通機関を利用できず、自家用車に頼らざるを得ない地方の住民にとっては、燃料費の値上げは死活問題です。「地球の終わりより、我々の日々の生活を心配しろ!」と、抗議の声が広がり、大規模なデモに発展していきました。
一方、エンタメ界では、2020年に公開を予定している人気スパイ映画「007」の最新作で、主人公ジェームズ・ボンドが地球に優しい「Electric Vehicle」(電気自動車)に乗ることが明らかになったと報じられ、話題になっています。
最新作の監督を務める日系米国人のキャリー・ジョージ・フクナガ氏が環境保護に熱心なことが理由だとされています。
Cary Joji Fukunaga is a 「tree-hugger」
(キャリー・ジョージ・フクナガ氏は「熱心な環境活動家」だ)
それでは、「今週のニュースな英語」は、「tree-hugger」(環境活動家)から、「hugger」を使った表現を学びましょう。
「hugger」は動詞の「hug」(抱きしめる)の関連語で、直訳すると「抱きしめる人」という意味になります。何かを「抱きしめるほど好きな人」というニュアンスで、以下のような言いまわしがあるようです。
dolphin huggers (イルカ愛好家)
panda huggers (パンダ愛好家)
愛好家と訳される一方、「hugger」は少しからかって使う表現で、あまり積極的に使わないほうがいいとされていますが、今回の報道を見る限り、フクナガ氏をからかうようなニュアンスは感じません。
とはいえ、ボンドが乗るのは超高級車のアストン・マーチンの電気自動車で、価格は約3700万円とか! 皮肉にも、「黄色いベスト運動」参加者の「俺たちはEVになんか乗れない。環境活動は金持ちのものだ!」というアピールを裏付けしているようにも受けとれます。
「007」と「黄色いベスト運動」、意外なところにつながりがありました。(井津川倫子)