収入源に乏しい学生にとって、株式投資でも「安く買える」ことは重要だ。
そこで今回の「企業分析バトル」で取り上げるのが、「スパークス・グループ株式会社」。この銘柄を選んだ理由の一つは、ズバリ「株価の安さ」である。スパークスの株価は1株213円(2109年2月25日の終値)。他にも選んだ理由はあるが、この敷居の低さを重視した。
1989年創業の投信会社、ジョージ・ソロス氏と親交
【スパークス・グループ(8739)】
2019年2月25日終値 213円
年初来高値(2018年2月1日) 419円
年初来安値(2018年12月25日) 160円
2019年2月28日終値 210円
たとえば、2018年12月6日付で取り上げた「クスリのアオキホールディングス」の株価は、1株7810円(2月25日終値)。最小単元100株を購入するのにも約78万円が必要になる。これでは学生の手が届きづらい。
一方、スパークス・グループの株価は、1株213円(2月25日終値)。100株買っても2万1300円。これなら、日々の生活費をやり繰りすれば捻出できる。あとは、この企業の「実力」がいかほどのものか、を分析する。
スパークスは1989年の創業。東京証券取引所 JASDAQスタンダード市場に上場している、独立系投資信託会社だ。顧客から預かった資金を投資する投資運用業務やスパークスが運用するファンドを販売する証券業などを行っている。
現在では有名な「ロング・ショート戦略」を、日本で初めて導入した功績で知られている。代表取締役は阿部修平氏。ボストンのバブソンカレッジでMBA(経営学修士)を取得した後、野村総合研究所に入社。かのジョージ・ソロスと関係が深いことでも知られる投資家である。
スパークスの投資戦略は「日本株式」「One Asia」「実物資産」「未来創生」の四つに分けられる。今回、その中で注目するのは「日本株式」と「実物資産」の二つである。
「日本株式」はその名のとおり、日本国内を対象としたいくつもの投資戦略が合わさったもので、その中でも特に大きな運用残高を誇っているのが、「日本株式長期厳選投資戦略」と「日本株式中小型投資戦略」の二つである。
また、「実物資産」への投資として、国内の再生可能エネルギー事業へ資金を投じている。投資案件数は2018年12月末時点で24件。太陽光・風力・バイオマスの発電施設で構成されている。2018年11月には、中部電力・トヨタ自動車などを共同出資者とする「未来再エネファンド」の運用を開始。規模を拡大させていく方針という。
「基礎収益」に着目
業績を分析する。今期(2019年3月期)の業績は、成功報酬の減少などを主な理由に、営業利益が前年同期比マイナス44.2%と減少してしまった。
しかし、注目したいのは下表の「基礎収益」の項目である。基礎収益とは、スパークスが最も重要な指標として設定しているもので、手数料控除後の残高報酬から経常的経費を差し引いた金額を表している。
この基礎収益は、営業利益に含まれる成功報酬と比べて、一時的な市場の動向などからの影響を受けづらく、実質的な収益力を測るうえで重要な指標となる。スパークスの基礎収益は非常に安定しており、その安定した収益能力を確認することができる。
また、この種の企業の業績を見るうえでよく使われる指標に、運用資産残高(AUM)があるが、スパークスのAUMは2019年3月期第3四半期の時点で1兆1443億円となり、これは前期末に対して1.7%増加している。今後もさらに投資規模を拡大させていくことが期待されるだろう。
有名ファンドマネージャーの動きに気をつけろ!
株価をみると、スパークス株は1株当たり213円(2月25日終値)。2008年のリーマン・ショックの影響により株価が100円を切っていた時期もあったが、その後持ち直し、近年は支持線(株価がこれ以上は下がらないと予測される価格帯のこと)が200円付近、抵抗線(株価がこれ以上は上昇しないと予測される価格帯のこと)が300円後半に引けるような推移を見せている。
現在の株価は過去5年間を見てもかなり割安な水準になっており、買い場を迎えていると判断できる。
ちなみに、株主還元として1株当たり7.0円の普通配当を実施しているほか、創業30周年を記念した3.0円の記念配当が予定されている。配当利回りは株価213円で計算すると約4.7%でインカムゲインを重視した投資家にとってもこの数字は魅力的ではないだろうか。
スパークスは日本国内を中心に、優秀な投資戦略で運用を拡大させているうえ、学生にとって手に取りやすい株価になっているのも魅力的。しかし、「基礎収益」「成功報酬」「AUM」といった他業種の企業では使われない指標が重要になるため、情報収集にはひと苦労するかもしれない。
また、特殊なリスクとして考えられるのが、有名ファンドマネージャーの離脱。万が一、それが発生すると規模の大きな資金の流出につながる可能性もあり、この業種ならではのリスクに関して熟慮する必要がありそうだ。
2019年2月25日の終値213円。購入は見送った。
【株式取引ルール】
・月200万円を上限に最低1銘柄(企業)を選ぶ、バーチャル投資です。
・投資対象は、新興市場を含む上場企業の現物取引です。
・1年間のトータルで損益を競います。