『働き方改革のすべて』(岡崎淳一著)日本経済出版社
2018年6月に成立した「働き方改革」関連法がいよいよ、この4月から施行される。1947年の労働基準法制定以来、約70年ぶりの労働法制の転換。残業の縮減、休暇の確保など、働く人の視点からの抜本的改革とされる。
時短勤務にかかわることが多いだけに、働く側、経営者側とも関心は高い。
ブラック企業生む温床
経済協力開発機構(OECD)の資料によると、2017年時点で日本の総実労働時間は1710時間で、世界第22位。英国の1681時間、フランスの1514時間、ドイツの1356時間などの欧州諸国と比べるとかなり長い。
日本では国民の祝日が多く、所定休日は多いが、年休取得日数が欧米に比べて20日程度少なく、残業が多くなっている。政府が進めている「働き方改革」では、残業の抑制とともに年休の取得促進を目指している。
じつは、現行の労働基準法でも残業時間の上限を定める仕組みは存在している。ではなぜ、まるで上限がないかのような状況が生まれているのか――。
それは、まず事業者が仕組みに無知だったり、また仕組みがあってもそれを守らずに働かせていたりすることが考えられる。あるいは、労働者側と労働協約で取り決めた上限がとても長かったり、規制が及ばない管理職に時間外労働を課したりするケースがある。
深刻な社会問題になっているブラック企業は、こうした「抜け穴」的な手段を組み合わせて、従業員を酷使したことが考えられる。
「働き方改革」では、さまざま議論を経て、新たに時間外労働の法的上限を設定。労使協定があっても、事業者はその上限を超えて働かせることができないことになった。上限を超えて働かせた場合は、刑事罰が適用される。