8年前の開業以来という大規模リニューアルを果たして2019年3月15日にオープンした「阪急メンズ東京」(東京・有楽町)。これまでファッション中心から、モノやライフスタイル関連へと取り扱う商品の幅を広げ、店内の7割を改装した。
なかでも注目を集めたのが、性関連の商品で成長を続ける「TENGA(テンガ)」の出店だ。関係者や専門家は、低空飛行が続く百貨店業界の新たな転換点を示す動きとみている。
リニューアルオープンの阪急メンズ東京に出店
店舗は「TENGA STORE TOKYO」。TENGA初の百貨店の直営店で、出店計画が発表されたときから業界内外がざわつき、先行きを不安視する声もあった。ところが、いざフタを開けてみると、門出のにぎにぎしさ、TENGAの明るいイメージもあってか、客が引きも切らない盛況ぶりだ。
TENGAの出店を主導した阪急阪神百貨店モードファッション商品部のマーチャンダイザー、民谷啓さんによると、計画に社内では相当の抵抗があったため、出店の発表から、しばらくは社内でどこの部署に顔を出しても「お前が(騒動を起こした)張本人か」などと言われたり、周囲から「テンガくん」と茶化されたりしたという。
しかし、民谷さんは、百貨店とは縁がないとみられていたTENGAと、パートナーとして組むことを、次代の百貨店の可能性を探るつもりでリニューアルに挑んだという。オープン当日の盛況ぶりをみて、その調子は軽やか。
TENGAがあるのは、フロアタイトルを「Other Side」と名付けられた6階の一角。国際都市・東京のなかでも、ファッションやカルチャーでアンダーグラウンド的な雰囲気を漂わすブランドを集めたスペースで、ほかにオリエンタルラジオの中田敦彦さんの「幸福洗脳」や、MSGMのメンズ系「MSGM College」などが並ぶ。
TENGAの店舗は、それらや他の名だたるブランドのショップに勝る人気ぶり。専門性と独自性を高め、「ファッションやカルチャーの起点となるような新しいスタイルのデパートメントストアを目指した」。TENGAの出店は、その試みの象徴だ。
高い評判や評価に、民谷さんは「楽しさナンバーワンの百貨店を目指す」と、さらに新たな挑戦を考えているようだ。