「社会人1年目の教科書 『伸びる人』の習慣 『伸びない人』の習慣」(菅沼勇基著)クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
新年度から社会人1年生としてスタートする人たちは、期待と希望の一方で不安もときおり感じる複雑な思いの時期をすごしているだろう。その時期をとらえて、新社会人の心構えを説く本も少なからず刊行されている。
「社会人1年目の教科書」は、そのものズバリのタイトル。そのココロは、ぴかぴかの「1年生」の時はかけがえがないもので、最初の1年間の頑張りしだいで、人生はまったく違ったものになってくるという。
経験して得た 20代は「基礎訓練」の時代
著者、菅沼勇基さんは1985年、横浜生まれ。大学卒業後、大手不動産会社に就職して3年後に独立。投資用不動産などを取り扱う「横濱コーポレーション」を起業し、33歳で年商50億円の事業に育て上げた。現在は同社の代表取締役だ。
菅沼さんは自らの経験から、人間は身体面、精神面では成長期が異なると述べ、前者のピークは小学校高学年から中学生。後者では中学から高校、大学へと進む過程が成熟のプロセスという。「そして、仕事でといえば20代のうち」と断言。それは「この時期に仕事の『基礎訓練』をやっておけば、30代、40代で何かまったく新しいことを始めるような事態や、難しいことにゼロから向き合わなければならないという事態にならない」から、と説く。
実家は農業を営む一方、家賃収入がある。そのため不動産の仕事に興味を持ち、学生時代から関係書籍を読み漁るなどして営業の知識を深めた。アルバイトで入った家電量販店では当初はバックヤード勤務だったが、読書で得た営業についての経験が生きて、ベテラン社員とならんで接客の販売員を任せられるようになった。
こうした若い時の経験が実を結ぶように、就職→独立→企業→成長とたどったキャリアから、「社会人1年生=最重要期」と考えるようになり、新社会人にその時期を有意義に過ごしてほしいと考えるようになった。
転職市場でも重視される
「社会人になった最初の1年間の頑張りいかんによって、人生はまったく違ったものになる」と、菅沼さんはいう。社会人1年目を「真っ白なキャンバスの上に描いた下地」に、たとえ後に別の絵などを上書きしても、下地はいつまでも残り、終生の自身に影響を及ぼすという。
人材を求めて転職市場を探ることがあるが、その現場で活動する転職コーディネーターが「『1社目でどんな会社に勤めたか』を非常に重視する」というエピソードを紹介。すでに転職を経験している人材でもそれは変わりなく、それは1社目がどういう会社で、どれくらいの期間勤めていて、そこでどのようなスキルを身につけたのかが、転職先で活躍できるカギになるからだ。
今後の労働事情の見通しでは、新卒で就職した後に勤め続けることより、適性や報酬などによって勤務先を変えることが一般的になるとされる。一人ひとりが、まさに「人財」となることが見込まれ、こうしたことからも1年目の過ごし方が大切になるという。
本書では「仕事の捉え方」「働き方」「仕事と遊び」や「手帳の使い方」から「異性との飲み会」などに至るまで、仕事にかかわるさまざまなテーマについて「伸びる人」と「伸びない人」を対比して、それぞれのアクションや反応、立ち回り方を指摘。たとえば「異性との飲み会」の項では、「伸びない人」は「合コンを息抜きだと考える」が「伸びる人」は「合コンを最高の営業トレーニングと考える」という。
目次にたくさん並ぶ「伸びない人」「伸びる人」の対比をみると、なんとか最初の1年間は頑張れるかもしれない。「仕事での目標」をめぐって、「伸びる人」は「120%を目標にする」ものだが「伸びない人」は「与えられたノルマを目標にする」。「伸びる人」になれるかなれないかは、あなた次第です。
社会人1年目の教科書
「伸びる人」の習慣 「伸びない人」の習慣
菅沼勇基著
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
税別1380円