「共働きは、夫が出世しなくなるってホント?」 ネットで話題...専門家に聞いた

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   「共働きをすると、夫が出世しなくなるってホント?」――。こんな投稿がインターネットで炎上ぎみになっている。

   「専業主婦として夫を支えた方が出世につながる」という、古くからある「内助の功」論だ。この女性活躍推進時代に、「そのとおり!」と支持する声が意外に多い。女性の働き方に詳しい専門家に聞いた。

  • 夫婦そろって前に進む共働き(写真はイメージ)
    夫婦そろって前に進む共働き(写真はイメージ)
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「年収2000万円以上なら専業主婦じゃないとダメよ」

   「内助の功」は最近、矢面に立たされている。2018年10月、ノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑(ほんじょ・たすく)京都大学特別教授が「僕は家族のことはタッチせず、典型的な亭主関白として研究にまい進した」と発言。滋子夫人の「妻の支え」が脚光を浴びた際、朝日新聞デジタルは「ノーベル賞に内助の功、強調するメディアに『違和感』も」(10月18日付)という見出しで批判的に報じた。

   2018年12月13日には、青森県五所川原市の市議会が、名誉市民などを表彰する際、受賞者の配偶者(主に妻)に贈る「内助の功賞」が「男女の役割の固定化につながり、時代にそぐわない」として廃止することを決議した。

   話題のきっかけになったのは、女性向けサイト「発言小町」に載った「共稼ぎって旦那さんが出世しないって本当ですか?」(2019年3月6日)という、次の投稿だ。

「子どもがいる共働きサラリーマン家庭の場合、夫が保育園のお迎えなどで時短を取ったり、定時で帰ることが多かったり、出張ができなかったりして仕事に集中できない環境だと、将来の出世に差がつくことがありますか? 出世するなら妻が専業主婦のほうがいいのでしょうか?」

   この投稿に対して、「もちろんです。妻が夫を支えるからこそ出世できるのです」と肯定する意見が約4割、「関係ありません。出世するかどうかは人によります」と否定する意見が約6割寄せられた。肯定する意見では、こんな声が多かった。

「大きな声では言えませんが、私の周囲では出世したのはほぼ専業主婦の家庭の男性だけ。妹の家も共働きですが、ご主人は、家事分担があるので残業できないと言っていました。まあ出世していませんね。でも、出世しなくても経済的に潤っているので、名より実を取るという感じでしょうか」
「共働きです。私の勤務先が遠いので保育園の送迎は夫です。夫は公務員なので異動希望を出せるのですが、『送迎があるので残業できません』と書いています。で、吹き溜まりみたいな部署にいます」
「出世のレベルによります。夫は年収2000万円以上。私が専業主婦をしている理由は、私が家庭のことをしないと、夫の生活が回らないほど忙しいから。私の周囲の奥様も皆専業主婦。ある一定のレベルを超えて出世すると、男女を問わず家事なんて全くできなくなります。私の同期でバリキャリの友人(独身女性)は、家事100%代行してくれる男性じゃないと一緒に暮らせないと言っており、家政婦を雇っています」

「共働きに理解ある会社なら夫婦そろって課長以上に」

   もっとも、「そのとおりだが......」と肯定しながら、こう指摘する声も――。

「私は家事育児折半男性で、確かに出世しなかったが、投稿者は大きな勘違いをしている。その逆、つまり『妻が専業主婦だと夫は出世するか?』というと、それは成り立ちません。うちの会社には妻が専業主婦でも出世していない人、たくさんいます。50代(ほぼ妻は専業)なのにヒラで、上司が30代(ほぼ共働き)なんてゴロゴロいます」

   一方、「そんなわけはない」という意見の代表的な声はこうだ。

「出世する人は、妻が専業主婦だろうが、共働きだろうがします。要は、単純に能力のある人が出世するだけ」
「共働きですが、私の夫は出世しましたよ。もっとも、家事育児は完全な私のワンオペで、学校行事への参加も子供の病気のための早退や休暇も各種役員も何もしませんでした。共働きで夫を出世させたいなら、妻に相当の覚悟と能力が必要だと思います」
「会社によります。子育てに理解がある会社とない会社で違うのではないですか? 私の会社は非常に理解があるので全く出世には影響しません。夫婦で同じ会社の方も、ご主人だけでなく奥様も課長以上の人がいます」

   J-CASTニュース会社ウォッチ編集部では、女性の働き方に詳しい、主婦に特化した就労支援サービスを展開するビースタイルの調査機関「しゅふJOB総研」の川上敬太郎所長に、この「内助の功論争」の意見を求めた。

   ――回答の中に4割近くも「内助の功」を肯定する意見がありました。女性の活躍が叫ばれる今、意外な感じを受けるのですが、なぜでしょうか。

川上敬太郎さん「内助の功の肯定者は、会社の現実を反映しているのでしょうね。出世する、しないは個々のケースによって変わりますが、全体の傾向としては、今の会社組織では共働きは出世に不利なケースが多いように思います。というのは、今の会社の価値観では、純粋に成果や実力を見て社員を評価するというより、長く残業して頑張っていたり、アフター5の付き合いが上手だったりする社員が出世する傾向が少なからずあるからです。
しかし、こうした価値観は変化の最中にあります。今後、残業時間の長さよりも、任されたタスクの遂行度合いや成果を純粋に評価するようになると、会社の価値観も自然と変わり、内助の功意識もなくなっていくでしょう」

「家事育児を一緒にやってくれるなら出世しなくてもいい」

   ――回答の中には「家事育児を一緒にやってくれるなら、出世できなくてもいいです!」という意見もありました。

川上さん「いい意見ですね。そもそも何をもって出世とするか、一般社会の価値観も変わっていくでしょう。正社員と呼ばれる働き方に代表されるように、1つの会社に強く縛られながら地位を得ていくのが出世なのでしょうか。これからは、実力を買われていくつもの仕事を掛け持ちし、独立したビジネスパーソンとして評価される時代になっていくでしょう。
私たちは以前、『10年後の夫婦の働き方はどう変わるか?』と、働く女性の意識調査をしました。7割以上の人が『夫婦対等の共働き』が増えると回答しました。そして、『10年後の未来は明るいか』と尋ねると、『明るい』という人が『暗い』という人の2倍もいました。すでに共働き世帯が専業主婦世帯の約2倍になっており、家庭の稼ぎ手が1馬力から2馬力へと移っています。1馬力時代に夫が出世して稼いだ給料分を、夫婦二人で補い合いながら稼ぐ時代になってきているのです。
言い換えれば、夫が出世して一人で家計を支える時代ではなくなるということです。『夫婦対等に共働き』社会になっていけば、夫が出世する比率は減少していき、一方で妻が出世する比率は今より高まっていく可能性があります」

   ――「出世」そのものの考え方も変わってきますね。

川上さん「はい。先の調査で10年後は明るくなる理由として、こんな声がありました。『共働きが当たり前になり、色々な働き方が社会で受け入れられるようになる。そして、社会の改善が進むから』と。まとめるとこうなります。今の会社や世間の価値観では、共働きは出世に不利に働きやすい。しかし、今後は共働きが進んで会社の価値観も変わるから、共働きが不利にならなくなる。そして、何が出世なのかという世間の価値観も変わっていくと思います」

   あなたにとって、「出世」とはなんだろうか。(福田和郎)

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