「会社はゲーム、新入社員はレベル1だ」古市憲寿さんが説く処世術(気になるビジネス本)

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「新入社員に贈る言葉」(経団連出版編)

   4月、新生活がスタートする。そんな新社会人の門出に当たり、著名人が「激励」を寄せた。

   「新入社員に贈る言葉」をテーマに、50人ものメッセージが読める書籍はなかなかない。しかも、1973年から続いている。2019年版は、ここ数年話題になっている、新社会人の高い離職率にふれたものが多いようだ。

   厚生労働省(2018年10月23日発表)によると、15年3月に卒業した新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率は、大卒者で31.8%、高卒者が39.3%だった。

  • 「レベル1」からスタート(写真はイメージ)
    「レベル1」からスタート(写真はイメージ)
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会社はゲームより奇なり

   大卒新入社員が3年以内に離職する割合が3割超える傾向が続くなか、その原因が日本独自の、新卒者の一括採用というシステムに、なんらかの問題がある可能性が指摘されている。

   とはいえ、熱心に就職活動をして内定をもらい、入社した会社だ。不安はあっても、「明日、辞めます」という人はそんなにいないと思いたい。会社も「そう簡単には辞めてほしくない」と思っているはずだ。

   テレビの情報番組などの出演も多い社会学者、古市憲寿さんは会社組織をRPGの構造に近いと解説する。

   新入社員は、ゲームでいえばレベル1のビギナーであり、そこからミッションをこなしてレベルを上げていくことになる。「ゲームもルールを覚えることが大変なように、『新入社員』も初めはレベル上げを意識するどころか、毎日のタスクをこなすのが精一杯でしょう」。

   そんな新入社員でも要領を覚えて困難を克服できるようになり、レベルは自然に上がるもの。「しかし」と、古市さん。「現実世界では残念ながらそうはいきません」と注意を促す。

   苦労してクリアしたミッションも徒労に終わるなど、会社生活は「優秀なゲームデザイナーが設計したRPGと違い、時に不条理、時に無慈悲」という。

   だからといってがっかりしてはダメ。「現実のほうがゲームよりおもしろいこともある」からだ。「それは、プレイするゲーム自体を変更できるということ、そしてゲームを変えても経験値の一部を引き継げること」。転職や独立という、別のゲームのほうが、もっとおもしろいかもしれない。「なにも自分が向いていないと思ったルールでいつまでも戦い続ける必要はありません」。

   古市さんがそうアドバイスを送るのは、いまはかつてのように「社長になること」「昇進すること」が会社ゲームの一番の目標だった時代ではないから。いまや転職や起業は珍しいことではない。ひとつの会社で勤めあげることだけが道ではないということだ。

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