「こんな会社なんか辞めてやる!」――。会社に勤めている人なら誰しも一度や二度、そんなことを思った経験があるかもしれない。でも、不満が募れば転職を考えるのが自然だろうが、会社を毛嫌いしても会社を辞めない人たちが5%ほどいるらしい。
転職口コミサイト「Vorkers」のデータを分析したリクルートワークス研究員の古屋星斗氏が指摘。そうした社員を「滞留・ぶら下がり型」と呼んでいる。
転職口コミサイトのデータを元に分析
Vorkersは、ユーザーが自ら勤める会社を8項目にわたって、それぞれ5段階で評価する口コミサイト。評価点から総合スコアを算出し、総合評価が高ければユーザーの会社への評価が高いと理解されている。
古屋氏はサイトの口コミデータ(2015年2月26日~17年12月31日)を元に、ユーザーを「転職目的」と「非転職目的」に分類。そのうえで、総合スコアが著しく高い、つまり会社への評価が高い人(4.0以上)と低い人(2.0以下)のデータに注目した。
転職目的者の中には、会社への不満は少ないものの転職を検討する者が5%、会社に強い不満を持ち転職を検討する者が8.1%いることがわかった。
一方の非転職目的者の中には、会社への不満が少なくて転職を目的としない者が14.8%いるものの、会社に強い不満があるのに転職を目的としない「滞留・ぶら下がり」型社員が4.7%存在することがわかった。
古屋氏はこうした「滞留・ぶら下がり」型社員が発生することについて、「企業と個人の関係が対等ではないこと」や「転職市場における流動性が高くないこと」が背景にあると指摘する。
「人材育成」への不満が強い
古屋氏は「滞留・ぶら下がり型」社員の企業に対する不満の正体を明らかにするため、各項目のスコアと総合スコアのかい離を計算し、さらに評価者全体との値とも比較分析した。
その結果、「滞留・ぶら下がり型」 で最も低評価だった項目は「人材の長期育成」だった。
逆に、最も評価が高かったのは「法令遵守意識」だった。
「滞留・ぶら下がり型」の社員が不満を持つ企業には、法令遵守の意識が高い一方で、人材の長期育成に課題がある企業が多いといえるのかもしれない。
古屋氏によると、「滞留・ぶら下がり」型の社員は近年、減少傾向にあることにもふれている。その一方で「滞留・ぶら下がり」型の社員の平均年齢は33.3歳と評価者全体(33.9歳)と比べても低く、今後のキャリアパスが続く中で望ましくない状態に陥っていると指摘する。
古屋氏は社員の不満を解消する環境の構築や、年齢の若い社員に対しては社外環境にふれる機会を増やすなどして退出を促すことが必要だと説いている。
なお、古屋氏の分析はVorkersの調査機関「働きがい研究所 by Vorkers」(2019年2月27日付)のレポートとして公開されている。