いま、英国が大変なことになっています。欧州連合(EU)からの離脱をめぐり、英議会が紛糾。離脱条件を定めた協定案が反対多数で否決されて、このままでは2019年3月29日に合意がないまま離脱するか、時期を延期するかのどちらかになりそうです。
先が見えない状況に、経済界の不満も爆発。次々と英国からの撤退を発表するなど、混乱は深まるばかりです。いったい英国はどうなってしまうのでしょうか?
「合意なき離脱」を英語で?
英国のメイ首相がEUとまとめた協定案を、英国議会が反対多数で否決。英国のEU離脱をめぐる混乱に拍車がかかると、世界中に激震が走りました。
Theresa May's EU withdrawal deal has been rejected by MPs by an overwhelming majority.
(テレサ・メイ首相のEU離脱協定案が、圧倒的多数で否決された)
withdrawal deal:離脱協定、離脱契約
be rejected by~:~によって否決される
by an overwhelming majority:圧倒的多数で
MP(Member of Parliament):下院議員(英国)
残された選択肢は、3月末にEUと合意がないまま離脱するか、離脱を延期するかのどちらかだと報じられていますが、いずれにしても社会が混乱する事態は避けられそうにありません。
それにしても、なぜ、英国はEUを離脱することを選んだのでしょうか? 今、世界中が注目している「ブレクジット」の基本の基本を、英語で振り返ってみましょう。
(1)「ブレクジット」って何?
Brexit is short for "British exit"
(ブレクジットは、「英国が出て行くこと」の略だ)
short for~:~の略
exit:出口、退場、出て行くこと
「ブレクジット」のスペルは「Brexit」で、「British」「exit」の省略。英国がEUを出て行く、という意味で使われている俗語です。
(2)「合意なき離脱」を英語で?
ニュースでよく目にする「合意なき離脱」は、「no-deal Brexit」と表現されることが多いです。「deal」(契約、取引)がない、つまり「合意がない」という意味で、離脱に関わる条件でEUと折り合いがつかないまま離脱することを表しています。
メイ首相の有名なことば「no deal is better than a bad deal(間違った合意をするよりは何も合意しないほうがまし)」に英国の強硬姿勢が現れていますが、今となってはこの強硬姿勢が凶と出るか吉と出るか、誰にも分からないといった状況でしょうか?
(3)「国民投票」を英語で?
そもそもの発端は、2016年6月に行われた「referendum」(国民投票)で、EU離脱を支持する人々の数が反対派を上回ったからです。その後の混乱を見る限り、「referendum」が正しい選択だったのかどうか疑問が残ります。
今回は、英国人特有のおおらかさ(いいかげんさ)が裏目に出てしまった感があります。
ダイソンも、ホンダも、続々「脱出」!
とにかく、この先どうなるのか「誰にも予想できない」なか、経済界の不満は高まるばかり。事業へのマイナス影響を懸念した企業が、続々と英国から脱出する「英国離れ」が顕著になってきました。
日本企業では、トヨタ自動車や日産自動車、ホンダが英国内での生産を調整する方針を発表。「スウィンドン(ホンダ)」や「サンダーランド(日産)」といった工場には、私も英国駐在中にビジネスで訪れたことがあるだけに、感慨ひとしおです。
このほか、ソニーやパナソニックが欧州本社を英国からオランダに、英家電大手のダイソンが本社をシンガポールに移転させるなど、ビジネス界の「英国脱出」は加速する一方です。
ダイソンは本社移転とブレクジットは「関係ない」としていますが、地元・英国の優良企業の脱出には、ふだんはおおらかな英国人も、「ダイソンよ、お前もか!」とショックを受けたようです。
それでは、「今週のニュースな英語」は、メイ首相の強気コメント「no deal is better than a bad deal」から「better than」を使った言いまわしを取り上げます。
Half a loaf is better than no bread.
(半分のパンでもないよりはましだ=「半分でもないよりまし」ということわざ)
No sleep is better than little
(ほとんど寝ないよりはまったく寝ないほうがいい)
No company is better than bad company.
(悪い仲間がいるよりは一人のほうがいい)
国民投票の直後、英国中がEU離脱ムードで盛り上がっていた時に、ある識者が「no deal is worse than no deal」(何も合意しないより悪いものはない)と言っていたことを思い出します。いずれにしても、「まだまだ先の話」と思っていた「Brexit」(ブレクジット」が、いよいよ現実のものとなってきました。英国をめぐる動きからしばらくは目が離せません。(井津川倫子)