「イラスト記憶法で脳に刷り込む英単語1880」(吉野邦昭・永井堂元著、佐藤文昭監修)あさ出版
ビジネスのグローバル化やインターネットのますますの発達で、英語をめぐるスキルアップのニーズが高まっている。増える訪日外国人客のおもてなしのための語学講座も盛んだ。
英語力アップのために最も必要なのは語彙力。文法を知らなくても単語がわかればコミュニケーションはなんとかなる。だから、英語学習では、勉強時間の8割が英単語の暗記に充てる必要があるとされる。こうした事情を背景に、昨今は「英単語」をフィーチャーした変わりダネの「学習本」がブームになっているという。
「絵コンテ記憶法」を採用
「イラスト記憶法で脳に刷り込む英単語1880」は2年前の2月に刊行され、2019年2月に35刷を発行。これまでに10万部を売り上げ、この種の書籍では異例のヒットという。
「最重要単語」とする1122語と、TOEICで「高得点狙うための必須単語」758語、さらに「基本単語」1120語―― の計3000語を一覧。「最重要単語」では「試験特化型記憶術インストラクター」で、著者の一人に名を連ねる吉野邦昭さんが開発した「絵コンテ記憶法」を採用し、単語と意味そのもののほか、単語の意味を連想させるイラストや、単語の発音や意味を織り込んだ「ショートストーリー」を添え、さらに、例文と和訳を加えた。
「ショートストーリー」は、脱力系のフレーズで、イラストを視覚情報として脳に取り込むうえで、記憶に強く残る手助けをするという。たとえば「ransom(身代金)」という単語では、ワインボトルを手にしたソムリエとふきだしに紙幣数枚が描かれたイラストがあり、ショートストーリーには「乱暴なソムリエの要求は、奪ったワインの身代金だ」。イラストもストーリーのフレーズも、無理仕立ての印象もなくはないが、確かに記憶には残りそう。1単語につき15秒で覚えられるような解説が心掛けられているという。
本書は「TOEIC完全対応」をうたっており、3つのジャンルに分けた計3000語は、同テストで500~800点レベルを目指すうえで必要な語彙を厳選したものという。いわゆる英会話で必要とされる単語の数は850ほどとされる。本書で3000語を暗記して、それがすぐそのまま実用的なコミュニケーションに使えるとは限らないが、リーディングなどでは大いに力になるはずだ。
著者として名を連ねているもう一人、永井堂元さんは「高速楽習コンサルタント」。神戸の名門私立、灘高校から東京大学法学部に進み、現在は成果報酬型の家庭教師をしており、高校3年の10月時に「京都大学D判定」だった生徒を3か月間で合格させ、教え子を何人も東大に送っているという。本書では、TOEICのスコアアップに直結する学習方法や受験でのテクニックをコラムで解説している。
大学入試でも変わりダネ需要高まるか
4月から新生活を始める社会人1年生の間で、知られざる共通の悩みのタネは「英語」なのだという。東京五輪景気で広がるビジネスチャンスを逃すまいとする企業のなかには、入社前から新入社員に対しTOEICのスコアアップを目指すよう促しているのだそうだ。入社2年目、3年目、あるいはそれ以上の社歴の社会人らの間では、TOEICなどに加えて「学び直し」の機運が高まっていることもあり、本書のような変わりダネの英語学習本への注目がたかまっている。
18年5月に発売されて、これまで16刷を重ねたという『英単語の語源図鑑』(清水建二著、かんき出版)もその一つだろう。英語教師である著者が、効率のよい英単語学習法を考えぬいた末、語源にまでさかのぼることにたどりつき、覚えやすいよう単語を図鑑にしたものだ。
たとえば「port(港、運ぶ)」という言葉を元に、support、transport、あるいはopportunityという単語があり、それぞれをいちいち覚えるより、関連付けて記憶するようにすれば、勉強の効率化が図られる。
2020年度の大学入試では、それまでのセンター試験に代わって、大学入学共通テスト(21年1月実施)が導入され、英語ではTOEICのような民間の資格・検定試験も用意される。変わりダネの英語学習本の需要はまだまだ伸びそうだ。
イラスト記憶法で脳に刷り込む英単語1880
吉野邦昭著
永井堂元著
佐藤文昭監修
あさ出版
税別1500円