「食べ歩いて発信」がレジャーに
インターネットが広まり始めた当時は飲食店をめぐっては、グルメサイトへの投稿がブームになったがまもなく、専門業者の"暗躍"が指摘され注目度が低下。その後、SNSが爆発的に広がり、飲食店の感想や料理の写真を知人間で競うようにアップすることが当たり前のようになり、店の成り行きを大きく左右するようになっている。
スマホの進化と普及で、利用者(消費者)は、食べ歩きレポートをするうえで機動力を備えるようになった。著者は「食べ歩いて情報発信することがレジャーになっている」とみている。その結果、初めて来た客が店を気に入ったとしてもリピーターとして定着することが少なくなり、昨今は「新規客の再来店率が極端に下がっている」状態なのだ。
「店舗商売は、繰り返し来店で人間関係を築き、相互の関わりを通じて共に成長することにその素晴らしさがある」と著者。だが、なじみになって、その顧客だけを大事にしていれば順風満帆というわけではない。初めて来た客には再来店や、店にとってプラスになるような情報発信を促すもてなしを忘れてはいけない。本書に収められているのは「1年で客の評価がうなぎのぼりになる6つのステップ」。そのプロセスは、初めての客を魅了しリピーターのなじみ客に変え、その顧客の口コミが店の実力になるという流れ。
やってはいけないこと
開店にあたっては必ず用意するのは「看板商品」。それも「『この料理を食べにこの店に行きたい』と思わせる商品設計が必要。口コミや評価が高まれば、ネット検索で来る新規客らの不安をなくすことができる。客に「おすすめは」と聞かれて「全部」と答えるのはNG。「食べ歩き」がレジャーになっている昨今、客はおすすめ料理を食べてみて再訪価値を判断しがちという。そうした期待に応えていない「全部」というレスポンスは客をシラけさせるだけなのだ。
注意喚起のためのお知らせも、客をシラけさせる可能性大という。たとえば、こんな貼り紙。「車上荒らしが多発しています。当店の駐車場で起こった事故には当店は一切責任は負いませんので、お客様ご自身でお気をつけください」。法律的に責任を負わないで済むかどうかは別問題として、こんな注意書きは、客を突き放した印象を与えるばかり。従業員も責任感が低くなって店員ら定着しないことになり、その結果「よいサービスができなくなるという負のスパイラルになる」と著者は警告している。
いつも予約でいっぱいの「評価の高い飲食店」は何をしているのか
大久保一彦著
ぱる出版
税別1400円