安倍晋三首相がドナルド・トランプ米大統領を、ノーベル平和賞の候補に推薦していた。
トランプ大統領が2019年2月15日のホワイトハウスでの記者会見で明らかにしたもので、北朝鮮問題での「実績」が推薦理由とのこと。安倍首相も否定はしていないし、日本政府の関係者によると、米国側からノーベル平和賞の候補に推薦してくれるよう、依頼があったのだそうだ。
「非核三原則」ノーベル平和賞の陰で米国と密約
もっとも、2月27、28両日の米朝首脳会談が物別れに終わり、この話には水が差された感じだが、いずれにしろ、これまで政治家がノーベル平和賞を受けたあと「失望」させられることが少なくなかった。
たとえば、トランプ氏の前任の米大統領だったバラク・オバマ氏。大統領になってすぐの2009年4月、チェコのプラハでの演説で、核兵器をすべてなくす核廃絶を誓い、同年のノーベル平和賞を受けた。
だが、それにふさわしいことは出来ず、「賞を返すべきだ」との批判まで浴びた。
1991年に「民主主義と人権を求める非暴力の闘い」をたたえられてノーベル平和賞を受けたミャンマーのアウン・サン・スー・チー氏も、失望を呼んでいる一人だ。
今は国家顧問だが、ミャンマーの少数民族で、政府から迫害を受けているロヒンギャ族の問題については、なんの手も打てないでいるように見える。
これまでにわが国でただ一人、ノーベル平和賞を受けた佐藤栄作元首相の場合はもっとひどい。彼は「核兵器を持たず、作らず、持ち込まぜず」の「非核三原則」を提唱したことを評価され、1974年に受賞した。
だが、米国との間では沖縄には核の持ち込みを認めるという密約を結んでいた。ただし、それが明らかになったのは彼の死後のことである。