花粉症が猛威をふるっている。くしゃみ、鼻水、目のかゆみがつらくて仕事どころではないという人も多いだろう。企業にとっても業務の生産性が下がる「魔のシーズン」だ。
そんななか、社員にしっかりと花粉症外来で治療を受けさせるために、治療費の補助を始めた会社がある。つらい季節を快適に乗り切ってもらおうという試みだ。
花粉症外来の治療費を年間1万円まで補助
この会社は、最先端テクノロジーの未経験者を即戦力レベルのプロのITエンジニアにまで教育するプログラミングスクールを運営するベンチャー企業「div(ディブ)」(東京都渋谷区、真子就有社長)だ。プログラム終了後は受講生をIT人材確保に苦戦する企業へ紹介、ITエンジニアとして就業するまでの支援を行っている。
社員数約160人のうち3分の1が花粉症を持っており、昨年(2018年)までマスクやティッシュを手放せない状態で仕事をしているのが現状だった。このため、現在もオフィスの中心部にマスクと高級ティッシュを置いており、従業員は自由にとれるようになっている。
そこで今年(2019年)から、花粉症外来で受けた治療費のうち、年間最大1万円まで福利厚生費から補助することにした。花粉症で悩む人にとってはありがたい話だが、真子就有社長自身もくしゃみ、鼻水に苦しんでいるからだろうか。同社広報担当の本谷亜紀さんはこう説明する。
「花粉症がつらくて仕事にならないという声を多くいただいていました。特に最近の花粉症は、花粉量もさることながら、鼻水だけでなく頭痛も伴う場合があります。弊社のワークルールとして『マイナスなものはせめてゼロにしよう』というモットーがあります。花粉症の人もそうでない人も同じように快適に働けるようにこの制度を導入いたしました。ちなみに代表の真子は花粉症ではありません。だからこそ、つらさをゼロにしてあげたいと思い、この福利厚生を始めました」
ただし、補助するのはちゃんと花粉症外来で治療を受けた場合で、市販薬などの購入費には出さない。専門医に診てもらい、適切な薬を処方してもらうのが一番大切だという狙いがあるからだ。また、結局市販薬は保険が利かない分、高額になるというデメリットもある。
本谷さんは、
「私自身もどうやら今年から花粉症なので、この制度を利用してみようと思います」
と語る。
「読書部」「映画部」「ラーメン部」「麻雀部」も補助!
divにはほかにも、社員のコミュニケーションや健康に配慮したおもしろい福利厚生システムがある。その一つが「ウェルカムサプライズランチ」だ。これは新しく入ってきた社員や契約社員に、一緒に行った人も含めてランチ代を補助するというもの。入社日から2週間以内なら本人は1500円まで、同行者は500円までを補助する。同時に最大4人までだが、新入社員が先輩社員と親睦を図るための「ミニ歓迎会」を積極的に勧めるためだ。
「弊社は夜の飲み会などはほとんどありません。私も利用しました。この制度のおかげで一気に会社に馴染むことができました」(本谷さん)
もう一つが「お昼寝制度」。ランチ後20分のお昼寝を許可している。みんな机に突っ伏して寝ている=写真1参照。
「食後の20分の睡眠は午後の集中力を高めるといわれていますが、熟睡は逆に夜の睡眠の質を低くするので、机で20分のお昼寝を推奨しています」(本谷さん)
さらに、「朝の瞑想」も行なっている。朝礼の時に全社員が目をつぶって瞑想する=写真2参照。これは、真子社長自身が色々な健康法を実践した結果、瞑想が「集中力の向上」「ストレス低減」「メタ認知力の強化」に役立つとわかったからだそうだ。ちなみに、メタ認知力とは客観的に自分自身の思考や行動を眺める能力をいう。
遊び心にあふれるオモシロ制度もある。社員同士のコミュニケーションを活発にする「部活のススメ」だ。5人以上が集まって部活を申請すれば、1人当たり半年で5000円の部活費を支給する。社員160人なのに、こんなにも多くの部活があるのだ。
「バスケット部」「みどりの会(明治神宮で朝瞑想をする会)」「読書部」「映画部」「ラーメン部(ラーメン食べ歩き同好会)」「麻雀部」「野球部」「フットサル部」「ゲーム部」「デザイン部(最新のデザインを学ぶ会)」
「1人でいくつの部活に入っても大丈夫です。私はラーメン部に入っています」
と本谷さん。ラーメンを食べすぎると......大丈夫ですか?
(福田和郎)