英国議会や政府は「そこまで」愚かではない
英国のEU離脱後に、経済取引がどの程度制限されるかについては、EU加盟国の意向に大きく左右される。しかし、彼ら加盟国の反応は冷たい。「自分で勝手に離脱を決めておきながら『離脱しても今までのような親密な関係を続けて欲しい』とは何事だ」という話だ。
彼らは、いわば離婚を切り出された夫(妻)のような立場であり、厳しい態度を取るのも当然といえる。英国にとっては、国内の交渉が終わったら、次にはEUとの、さらに難しい交渉が控えているということだ。
我々、日本にとって幸いなのは、これは基本的に欧州域内の問題であり、日本への直接の影響は大きくないとみられること。英国や欧州で営業している企業などの場合を除けば、我々にとって経済の問題はそれほど心配する必要はない。
しかし、英国そしてEUにとってはマイナス要因になり得るので、為替相場に関してはポンド安やユーロ安といったシナリオが考えられるし、金利についても英国そしてユーロ(欧州)で悪影響を減じるために中央銀行が金利を下げる可能性がある。
とはいえ、期限が差し迫った今も、それほど為替相場が動いていないのは、3月28日になし崩し的にEU離脱となり大混乱が起きる、という最悪の事態は回避できると思われているだめだろう。
私も英国議会や政府がそこまで愚かではないと考えている。事態は非常に流動的だが、最も可能性が高いシナリオは、期限の延長をして交渉に時間をかけていって、EUから一定の譲歩を引き出しつつ、穏便に離脱する、というところであろう。
一方で、国民投票をもう一度行い、その結果EUに残留することになるという逆転のシナリオもまだまだある。いずれにせよ、我々としてはメイ首相がリーダーシップを発揮して、いい結果に導いてもらうよう祈るしかない。(小田切尚登)