百貨店業界は、バブル崩壊後のデフレと少子高齢化による、個人消費の縮小により、長期低迷を余儀なくされてきた。百貨店の売上高のピークは1991年の約12兆1000億円。それが2017年には約5兆9000億円と半分弱まで落ち込んでいるという。中国人による爆買いブームは、中国政府の規制により、すっかり影を潜めたようだ。
厳しい経営環境にある百貨店業界が、期待しているのが政府の観光政策。三越伊勢丹ホールディングス(HD)の杉江俊彦社長は、2019年1月25日の日本経済新聞社「新春 景気討論会」で、「日本は世界で一番観光資源がある」と語気を強めた。
西欧では団体旅行に現地ガイドをつけるのがルール
恒例の日本経済新聞社「新春 景気討論会」の後半、司会者から「人口減少や生産性の低さなどが指摘されるなか、長期にわたり成長力を維持するために必要な方策は何か」と、出席者に問題提起がなされた。
その答えを、三越伊勢丹HDの杉江俊彦社長は、
「国内総生産(GDP)のうち、観光が生み出す割合は5%で、他の西欧先進国並みの10%に引き上げるべきだ」
と、述べた。
たとえば、西欧では「団体旅行」に対しては現地ガイドをつけるルールになっていることを紹介。「観光政策の強化」を語られた。
2018年3月にスペイン旅行をした時、最初に感じたことは、海外からの観光旅行者が多いことだった。どこの観光地に行っても、旅行者であふれていた。その状況を見て、スペインでは、観光ビジネスが国の重要な収入源であることが容易に推測できた。
西欧諸国では、スペインのように観光収入が国の財政に大きな役割を果たしている。「観光ビジネス」は、海外からの団体旅行を受け入れることで、各地に点在する文化遺産の入場料、旅行者が宿泊するホテル、レストランでの食事、飛行機、鉄道、バスやタクシーなどの交通手段、百貨店やショッピングモールでの免税店、土産物店などと業種の裾野が広く、また雇用の拡大に結びついている様子がうかがえた。
同じことは、少子高齢化で労働力人口の減少に悩む日本でも可能だと思った。