スマートフォンの普及にしたがって、株式や外国為替証拠金取引(FX)、仮想通貨の取引ツールとしてスマホ用アプリを提供する証券会社は増えつつある。
実際に若いトレーダーを中心に、スマホ用アプリの利用者は増加している。現在、スマホはビジネスの場でもプライベートでも、多くの人にとっての必須品である。スマホを使ったトレードが人気を集めるのは、家にいても外出先でも、いつでも手軽にトレードできるのが魅力だからだろう。
家でも、外出先でも!
もちろん、スマホアプリを提供しているオンライン証券口座でも、従来どおり、パソコン(PC)用のソフトから注文や決済を行うことも可能だ。実際、スマートフォンでは使うことのできない複雑な分析ソフトを使ったり、複数のモニターを使っていくつものチャートを同時に表示させたり、さまざまな情報を収集したりする必要のあるトレーダーは、従来どおり画面を開いてトレードしている。
また、売買するのは家にいるときだけで、外出先で相場を見ることがない人も、スマホ用アプリを使うよりは、PCの大きな画面で取引するかもしれない。
とはいうものの、スマホを使って取引ができるのは、非常に便利だ。「東大院生が考えたスマートフォンFX」(扶桑社刊)の著者、田畑昇人氏は、表題のとおりスマホ用アプリを使ってFXをトレードしている。
FXの汎用チャートソフトとして人気のものに「メタトレーダー4(MT4)」があるが、このソフトはPC用だけではなくAndroid版とiOS版もリリースされていて、デイトレードで使うこともできる。
スマホ用アプリは、単に株価や為替相場の推移を確認する目的でも、手軽に使える。筆者の場合、取引口座とは別にAndroid版MT4アプリでデモ口座を開設して、チャートを確認するようにしている。
その一方、実際の取引はPC端末から。スマホ用のアプリはチャートを確認するには便利だが、あまりにも手軽に取引することができるので、よく考えずに注文を出してしまうのを防ぐためだ。
仕事中の「トイレトレード」で200万円の大損
スマホを使ったトレードは手軽であると同時に、自制心が求められる状況もある。たとえば、朝9時から夕方5時まで会社で働いているサラリーマンの場合、アプリをスマホにインストールしていると、仕事中に相場が気になってしまうかもしれない。
成長株投資の良書である「1勝4敗でもしっかり儲ける新高値ブレイク投資術」(東洋経済新報社刊)の著者、DUKE。氏は、東証一部上場企業に勤めるサラリーマンで、結婚して株式投資を始めた、いわゆる「兼業投資家」だ。
最初のうちは「ビギナーズラック」で初期資金を3倍まで増やしたものの、その後損切りができずに連敗が続き、最初に得た利益はすべて失ってしまったという。
なかでも酷かったのは、勤務中にトイレにこもってスマホから発注する「トイレトレード」だそうだ。仕事をサボって1時間トレードした結果、200万円もの損失を出してしまった、という。
仕事であれプライベートであれ、なにか別のことをしている最中に「ついでに」トレードをするのは、あまりおススメはできないようだ。
やはり、トレードする「時間」は投資に集中したほうがいいし、仕事をしている間は仕事に集中すべきなのだ。もし、スマホ用アプリがあるせいで、仕事中なのに相場が気になって仕方がないのなら、いっそのことアプリはアンインストールして、自宅のPC端末だけで、取引するルールを自身に課すのもアリかもしれない。(ブラックスワン)