伊藤忠のTOB提案 なぜ、デサントは「敵対的=悪」と思ったのか?(大関暁夫)

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「敵対的TOB」は「悪」 そう勘違いする社長はこんな人

   買収、特に敵対的TOBというと、なんとも強引な感じがして「悪」のイメージがつきまとうのですが、今回のようなケースでは株主に対して経営改善提案をされているのだという観点で捉えるなら、それはその行為そのものを無条件に拒絶すべきものとして考えるべきではなく、むしろ前向きに提案を受けとめながら、それに勝る対応策を考えるのか、あるいは提案を受け入れるべきなのかを真摯に考える、そういった姿勢で捉えるべきものではないのかと思うのです。

   「敵対的」という言葉の印象が悪いのかもしれません。あるいは過去の実例におけるハゲタカ的なやり口が、先入観につながっているのか。本件は、企業買収やTOBに対する正しい理解を醸成する、いい機会になるのではないかと感じるのです。

   デサントが必要以上に伊藤忠のTOBを悪者扱いするのは、やはり現トップが創業家であり、自社が自分のものであるという意識が考えの根底にあるからではないかと思います。個人的には、ここに大きな勘違いがあると思っています。

   上場企業、すなわち株式を公開している会社は「誰のものか」と言えばそれは株主のものであり、経営者の利益よりも株主の利益を優先して考える経営が求められるからです。

   この一件を経営者の立場から見ていたO社長もデサントに同情的で、「伊藤忠=悪」と感じていました。これは、O社長がデサント社長と同じく創業家社長であるからなのでしょう。もちろん、O社長の会社の株式は未公開の100%自己所有ですから、現時点で自社を自分の持ち物と考えることは正当な考えであるといえます。

   しかし近い将来、自社の上場を考えるという立場からは、上場すること、すなわち株式を公開するということの意味合いについて、上場までにしっかりと正しい理解をもっていただきたいと思うところなのです。

   デサントに対する敵対的TOB報道に、世の中の「会社は誰のものか」に関する正しい理解は意外なほど進んでいないのだと、はからずも実感させられた次第です。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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