管理職必読!「個」が重視される時代 今どき新入社員は「自分を見てほしい」瀬戸口社長インタビュー《後編2》

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「危機意識」の中で育ってきた新人をわかってあげよう

――ところで、ファーストキャリアのレポート(前編)によると、最近の新入社員は「安心・安全型」のAタイプと、「自己偏重型」にBタイプに分かれるとあります。それぞれ一長一短があり、接し方が難しい。管理職は、どう接していけばいいでしょうか。

ファーストキャリアの瀬戸口航社長
ファーストキャリアの瀬戸口航社長
瀬戸口さん「Aタイプは、上司が少しずつペースをつくってあげるとよいでしょう。『仕事というのはこういうものだ』と言っても通じません。及第点を確保できるような少し前のゴールを見せて、『さあ、ここまでやってみよう』と寄り添いながら前に進ませるのです。Bタイプは積極性がありますから、やる気をそがないように『やってみなはれ』と押してあげるとよいでしょう。ただし、自分本位になりがちですから、上司が一緒に考えながら目に見える成果をあげさせてあげるのが大事です。
ただし、彼らをAタイプとBタイプとレッテルを貼らないことが重要だと思います。AもBも実は根底では同じ傾向を持っているのです。同じ人間が、ある場面ではAが強く出るが、別の条件の元ではBが強く出たりします。だから、表層的な面だけを見て、この若者はAタイプだ、Bタイプだと決めつけないで接することがとても大切です」

――確かに人間はステレオタイプに分けられないですよね。AタイプやBタイプの根底にある同じ傾向とはなんですか。

瀬戸口さん「今は『個』が重視される時代ですから、彼らは給与や労働条件などよりも、どれだけ自分を見てくれているかということを一番重視して企業を選んでいるのです。研修や育成の期間でもそれは重要で、『いつも気にかけているよ』『よく見ているよ』と相手にわかる姿勢で接することが大事なのです。
ただし、背中ばかり見ていると監視しているみたいになるので、どんな小さいことでもいいから、何か貢献できることを渡してあげるといいです。今の若い人は他者への貢献を通じてアイデンティティーを確立する傾向があると言われていますから。それと『フルゆとり世代』に共通する傾向として、ほめて伸ばすことが大事です。当たり前のことですが、何か成し遂げたら『よくやった』『ありがとう』『君がいてくれて助かるよ』と心からほめてあげることです。それが若い人の自己承認につながるのです」

――誰だってほめられるとうれしいですが、特に「フルゆとり世代」には、ほめることが大事なのですか。

瀬戸口さん「それは、今の若い人の健全な危機意識からきています。若い人は別に優越感に浸ろうとしてほめられたいのではありません。『君の居場所はあるよ、ここだよ』と認めてもらいたいのです。ずっと横ばいの社会の中で生まれて育ってきていますから、ちょっとでも失敗したら自分は必要なくなってしまうのではないかという危機感があります。
最近は、AIに仕事を取って代わられるのではないかという心配もあります。SNSのような便利なものが流通するからこそ、社会から隔離されるのが怖いとか、不安が尽きないのです。管理職はそこをわかってあげてほしい。ごく当たり前のことですが、人間として対等に接してほしい。社内メールがきたら、見っ放しではなくちゃんと返信する、『ありがとう』『よくやった』『助かるよ』と絶えず声かけをしてほしいものです」(おわり)

(福田和郎)

【プロフィール】
瀬戸口航(せとぐち・わたる)
株式会社ファーストキャリア社長、株式会社セルム執行役員
早稲田大学商学部卒業後、大手コンサルティング会社で自動車業界を中心に新規事業開発支援・ビジネスプロセス構築などに従事。2010年ファーストキャリア入社。16年4月から現職。大手企業を中心に新人・若手人材の育成支援のコンサルティングや教育研修体系の構築を手がける。

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