優秀な若手にはすぐ活躍できる場を与える
――二つ目の人事・育成部門の担当者はどう対応すべきでしょうか。
瀬戸口さん「ポイントとしては、『若手が活躍できる場の設計をし、まずはできることから進める』ことです。可能性と気概を持つ若い人が、早く活躍できる場を社内に作ってほしい。『石の上にも3年』というように、せっかくポテンシャルある新入社員たちを採用したにも関わらず、最初の2年間は工場配置とか5年間は下積みとか、既存のラインに乗せていくのが一般的です。重厚長大系の大会社では、AI(人工知能)に長けた人でもないかきり、ほとんどがそうです。
決まりきった仕事ばかりさせて、優秀な若手のやる気をそいでいるケースがとても多いです。もちろん、業界や自社をしっかりと知ることから始め、基礎の基礎を固めることは重要ですが、会社側と新入社員との間に行き違いが起きてしまっているようです」
――入社したての優秀な若手のやる気を引き出すにはどんな方法がありますか。
瀬戸口さん「人事の施策レベルで具体的な例を紹介すると、メーカー系のA社では、『ファストトラック(若手の早期選抜による育成)』を行っております。普通の企業の選抜研修というと、課長クラスのマネジメント層になる手前あたりから始まりますが、A社では内定段階から選抜するようです。若手数百人のうちから、数人をファストトラックに乗せていきます」
――超エリート教育ですね。ほかの数百人の新人とどう違うのですか。
瀬戸口さん「入社後の配属から別のラインになります。将来グローバルでも活躍できるリーダーに育てようと、ありとあらゆる修羅場をくぐらせ、リーダーにふさわしい育成コースを歩ませるということになります」
――A社のケースは特別と思いますが、能力とやる気のある新人に活躍の場を与えるケースでは、他にどんなものがありますか。
瀬戸口さん「今までになかった新人の斬新な発想を会社の改革に生かすのです。業務改善や新規事業開発でもいいですが、実際にプロジェクトをつくり、担当させるような取り組みです。たとえば、運輸交通系のB社では、現場のオペレーション部門に配属される新人を対象に、1年目の秋口から約4か月に渡って、現場における問題解決のアクションラーニングを進めました。これは、インプットだけに留まらず、自分たちで仕事の問題点の解決策を考え、計画などをアウトプットしていくものです。
アクションラーニングの最終発表などでは、社長をはじめ役員、部長クラスが参加し、若手の提案に対して実際に経営判断をしたり、具体的なアドバイスを行なったりします。1年目の新入社員には先輩社員がメンターとして付き、そのメンターもアクションラーニングの集合研修に一緒に参加します。そして、研修以外の時間は新人とメンターが2人3脚で課題の把握や解決へのアクションプランに取り組みました」