この数年、訪日外国人観光客は年々増加。2018年は3119万人(政府観光局調べ)で、過去最高を記録した。
デジタル時代の旅行は、その途中や目的地でスマートフォンから、SNSを使って情報発信するのがトレンド。外国人観光客らのSNS投稿を解析してわかった発信地点ランキング「インバウンドレポート2018」を、調査会社のRJCリサーチ(東京都新宿区)が発表した。
人気「投稿スポット」、テーマパークはTDLじゃない!?
訪日外国人旅行者の消費行動は、中国人観光客らの爆買いが鳴りを潜め、「モノからコト」へと広がっている。
発信地点ランキングは、データ解析事業のナイトレイ(東京都渋谷区)が提供する訪日外国人のSNS解析ツール「inbound insight(インバウンドインサイト)」によって解析したデータを基に、RJCリサーチが訪日外国人のクチコミ発信地点情報を中心に集計し、分析した。
分析対象のSNS投稿数は8万3165件で、アカウント(投稿者ID数)は1万5877人分。場所情報やテキスト、イメージの有無などでインバウンドインサイトを使ってスコア化(総数18万6616ポイント)して、その多い順にランキングした。
ランキングによると、「観光・レジャー部門」の1位は、大阪市のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)だった。2位に千葉県浦安市の東京ディズニーランド(TDL)、3位は京都市の伏見稲荷大社。4位がTDLに隣接する東京ディズニーシー(TDS)、5位は大阪城だった。
6位に東京タワー、7位が明治神宮、8位に東京スカイツリー、9位が奈良公園、10位は京都市の「竹林の小径」――だった。
訪日外国人客、3年で2倍のUSJ
USJでは2014年7月、映画「ハリー・ポッター」シリーズをテーマにした新エリア「ザ・ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」をオープンして集客力が大幅アップ。この年、訪日外国人の年間入場者数が100万人に到達した。さらに17年4月に、人気アニメ映画のキャラクター「ミニオン」を主役にした「ミニオン・パーク」を開設。これを機に中国、韓国、台湾、香港などからの来場者が増え、17年の訪日外国人の入場者数は200万人を突破し、USJを訪れた外国人観光客は3年で倍増した。
東南アジアなどからの訪問者で、USJの人気が高いのは関西国際空港に近いこと。アジア各国からのLCC(格安航空)が数多く就航していることの効果があるとみられている。
一方、USJの近くに、今回のランキングでは圏外ながら、注目が集まっているスポットがある。USJ西側の人工島、舞洲(まいしま、大阪市此花区)に立つ「舞洲工場」。大阪市、八尾市、松原市のゴミ焼却場だ。
ゴミ処理場はなぜ? と、多くの人が首を傾げるというが、USJにあるようなポップな外観が一見の価値あり! と見に来る人が多い。予約すれば、施設内を見学できる。
自然との調和を目指した建築で知られるオーストリアの芸術家、フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー氏がデザインした工場で、2001年に完成した。同氏が手掛けたゴミ焼却場は母国、オーストリア以外では、この舞洲工場だけで、とても希少価値が高い。
年間約1万2000人の見学者を迎えるが、そのうちの3割ほどは外国からの観光客。外国人向けの日本観光をテーマにしたウェブサイトで紹介され、知られるようになったという。
「忠霊塔」って、知ってる?
「〈総合〉SNS発信地点ランキングTOP100」をみると、大阪の「舞洲工場」のような、「これはどこ?」「なんでそんな場所が?」と思わせる場所が少なくない。
たとえば、総合58位にランクされた「忠霊塔」は、山梨県富士吉田市の新倉山浅間公園にある。公園は地元ではサクラの名所として知られていたが、富士山を背景にしたサクラと忠霊塔の写真がインターネットで評判となり、有数の投稿スポットになった。
ちなみに、誰もが知っている観光名所、富士山は総合61位。場所によっては通信環境が制限されることが影響しているのか、忠霊塔より下位だった。
また、総合89位の「TOHOシネマズ」は東京・新宿の歌舞伎町の、建物から顔を出すように据えられている「ゴジラ」を目当てに、観光客らが集まるらしい。