管理職必読!今どき新入社員は「安心安全型」と「自己偏重型」タイプ別「育て方のコツ」《前編》

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   最近の新入社員は次の2タイプに分かれるという。

   「おとなしくて真面目。言われたことをほどほどのレベルでそつなくこなす。しかし、基本的に受け身だが、傾聴のレベルは浅く、考えるのではなくすぐに正解を求める」。これがA型の「安心・安全型」で全体の約8割を占める。残りの約2割は「自分の考えを持ち、積極的で発信力があり、最高レベルを目指そうとする。しかし、なかなか自分の考え方を捨てず、自分の考え方に合わないヒト・コトには排他的になる」。これがB型の「自己偏重タイプ」という。

   「3年3割」と言われ、大卒新人が離職する割合は、3年以内に3割以上になった。大手企業を中心に新人・若手人材の育成支援のコンサルティングを行なっている「株式会社ファーストキャリア」(東京都渋谷区、瀬戸口航社長)の調査で、最近の新入社員の実態が明らかになった。

   若い人材の売り手市場が続く現在、若手の転職が止まらない。企業は若手を引きとめ、どう育成していったらよいか、2回に分けて報告する。前編ではファーストキャリアが調査した「新人社員の傾向と対策」を元に最近の新入社員気質を探り、後編では瀬戸口社長にインタビュー、具体的な対応策を聞く。

  • 「スマホネイティブ世代」が最大の特徴だ
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「フルゆとり世代」×「スマホネイティブ」が特徴

   ファーストキャリアは、大手企業を中心に年間約1万7000人の新人研修を実施。その結果を『【2018年度】新人社員の傾向と対策~成長の考え方「自分」「ヒト」「コト」へのアプローチ~』という調査レポートにまとめた。2018年4月に入社した新入社員を4~5月に研修した際、新人の傾向や行動特性について、1970人の新入社員本人へのアンケート調査と、研修担当講師、企業の研修リーダー、人事担当者へのヒアリングから分析したものだ。

   新入社員傾向レポートによると、2018年度入社の新入社員(4年制大学卒)が育ってきた環境には、二つの大きな特徴がある。1995年度生まれが多いが、彼らは唯一小学校1年から高校3年まで一貫して「ゆとり教育」を受けてきた世代で、「フルゆとり世代」と呼ばれる。もう一つは「スマホネイティブ世代(特にスマホが生活の中心になっていった世代)」のはしりであることだ。彼らが13歳だった2008年にiPhone3Gが初めて日本に登場。そして、18歳だった2013年にはスマホ保有者の数がフィーチャーフォン(いわゆるガラケー)所有者を超えた。スマホ時代の到来に思春期を送った世代なのだ。

   J-CASTニュース会社ウォッチ編集部の取材に応じた、ファーストキャリアナレッジ開発本部の調査レポート担当の加藤博司マネージャーはこう説明する。

「フルゆとり世代は、すべての教育課程で、『ほめて伸ばす』と『興味関心のあることへの没頭を推奨する』というゆとり教育を受けてきました。また、SNSなどを活用し、『狭く深いつながり』と『浅く広いつながり』を上手に使い分けるコミュニケーションを日常としてきました。
そのうえ、超売り手市場の就職活動の中で、企業を『自分が評価をする、選ぶ立場である』ことを強く体感してきたため、自分を肯定する意識や、自分を中心に物事を見る視点が、非常に強くなっている傾向にあります。これは、裏を返すと、失敗や叱られることに弱い、そもそも自己肯定感が得られるか分からないことには積極的になれない、自分の気持ちを素直に伝えても有効と思えない相手には自分から積極的に関われない、という欠点をもっています。そこをどう伸ばすかが新人教育のポイントになります」

   さらに加藤さんはこうつけ加えた。

「もう一方で、先に述べたようにスマホネイティブ世代ですから、関心が向いたことに関しては、世の中にある情報をうまく収集して、それらを活用することが非常に得意です。むしろ、会社の管理職層より長けていると言ってもいいと思います。ただし、この能力も広く浅いという弱点を持っていますから、新人教育では、集めた情報を論理的に整理し、そこから意味を見出すことや、想像力を働かせて様々な可能性を模索すること、得られた答えを疑い検証するような力を養うことが大切になります」

   新人たちのアンケート調査でも、企業にこんなことを望む声が多くあった。

「実践の機会を多く与えてほしい」
「自ら考える機会を与えてほしい」
「自分たちの向上心・挑戦心を活かす機会を与えてほしい」

などだ。いずれも自己肯定感、自分視点に立った要望事項のようにとらえられる。

自分にとって「意味のない、価値のない」上司は相手にしない

   さて、「フルゆとり世代」×「スマホネイティブ世代」という特徴を持つ新人だが、最近、大きく分けて次の2つのタイプへの二極化が進んでいるという。

   A型「安心・安全型」はこんな行動特性を持つ。

(1)おとなしくて真面目。基本的に言われたことを、ほどほどのレベルでそつなくこなす。
(2)基本的に受け身の姿勢だが、人の話を傾聴するレベルは浅く、考えるのではなく、正解を求めようとする。
(3)失敗しない行動を優先し、同調することを重視して、周囲との関係性を大切にする。

   一方、B型「自己偏重タイプ」はこんな行動特性を持つ。

(1)自分の考えを持ち、積極的で発信力があり、仕事などでは自分が考える最高レベルを目指す。
(2)人の要望や意見を聞く姿勢はあるが、なかなか自分の考えは捨てない。
(3)自分の考えに合致しない人や周囲に対して、時に排他的になる。

   それをふまえたうえで、加藤さんは新人教育の上で重要なポイントをこう語った。

「育成する側としては、まず両タイプに共通する『自己肯定感』を大切にしながら、少しハードルを上げた目標・役割を与えてあげることが大切だと思います。また、両タイプとも『自分視点』が強いですから、『相手視点』や『全体視点』を身につけることの重要性を意識させることが必要です。
そのうえで、それぞれのタイプの一長一短に応じた育成を考えていくことが大事です。また、前提として、自分にとって意味のある、価値がある人からの意見やフィードバックは、とても好意的に受け止める傾向がありますが、逆もまたしかりです。『意味のない、価値のない人』と思われては相手にされなくなります。育成する側は、新入社員に対して普段から真正面に向き合い、信頼関係を築いておくことがとても重要になります」

それぞれの「グッドストーリー」と「バッドストーリー」

   加藤さんによると、A型「安心・安全型」の長所を伸ばして成長に導く「グッドストーリー」はこうなる――。

(1)言われたことを素直に聞き、場の状況を読んで合わせることができるので、周囲からも及第点と認識されるレベルの目標を設定し、確実に達成するように取り組む。
(2)経験を少しずつ積み、重要な業務・役割でも安定・確実な成果を上げて、着実に成長する。
(3)安心・安全を与えてくれる上司・同僚や職場環境の元では、周囲に献身的にふるまい、期待されている以上の組織貢献をしてくれる人材として喜ばれる。

   一方、長所を伸ばせなかった場合の「バッドストーリー」はこうだ。

(1)過剰な目標を設定された場合、自信を失う。「今」自分ができることしかできなくなり、やったことがある仕事にのみ能動的になる。
(2)経験により得られた知見・スキルが使えない部署に配属されたり、役割を与えられたりすると、キャッチアップ(遅れを取り戻すこと)に時間がかかり、成長が鈍化(時には後退)する。
(3)そして、自ら考えて工夫し成果を上げることや、皆をリードする、周囲を巻き込む仕事が苦手になる。

   また、B型「自己偏重タイプ」の「グッドストーリー」はこうなる――。

(1)経験のないことにも挑戦する意欲が高いので、できるかどうかを見極めながらも高い目標を設定する。自らの主張として設定した、という体裁が良い。
(2)チャレンジした成功体験、失敗体験から多くを学ぶ。自分の考えをさらに積極的に発信するようになり、思考が磨かれ、自分の考えを成果に結びつけるスキルが高まる。
(3)次なる自分の目標となる人や仕事を求め、自己実現を目指して、意欲的に取り組みながら成長し続ける。

   一方、「バッドストーリー」はこうだ。

(1)自分本位の仕事ぶりが多くなり、上司・先輩、関係者との距離が離れて、一人でやれることしかできなくなる。
(2)自分目線・視点での成果・アウトプットが多くなり、相手視点を取り入れられず偏った成長を遂げる。
(3)もし、自分の目標となる人や仕事が見つからない場合には、職場に対する満足度が下がり、意欲的に取り組まなくなってしまう。

   新入社員にとっても、彼らを育てる会社側にとっても、ぜひとも「グッドストーリー」を作りたいものだ。それにはどうしたらよいのか。後編では、ファーストキャリアの瀬戸口航社長の話を聞く。

(福田和郎)

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