働く女性の多くが職場でカラダの不調に悩んでいるが、仕事の生産性をいちばん下げている症状は何か?
「頭痛」「肩・首こり」「寝不足」がワースト3だが、意外な「難敵」が隠れていた。それは......。主婦に特化した人材サービス「しゅふJOB」の調査機関「しゅふJOB総研」が2019年2月4日に発表した「身体の症状と生産性」調査でわかった。
悩まされる症状1位は「肩・首こり」
気持ちよく働いて生産性を上げるには、何より健康であることが大事だが、働く女性に仕事中に悩まされたことがあるカラダの症状を聞く(複数回答)と、「肩・首こり」(73.3%)が圧倒的に多く、次いで「疲れ目」(53.2%)や「腰痛」(43.4%)、「頭痛」(41.3%)、「寝不足」(39.6%)、「冷え性」(33.0%)と続いた=図表1参照。
ちなみに生理痛は、人それぞれで重さもまちまちなうえ、頭痛や腰痛などさまざまな症状をもたらす要因の一つとして、調査では外した。ただ、実際には「その他」の項目に生理痛と書いた人もいたという。
次に「仕事の生産性を著しく下げると思う症状」を聞くと、「肩・首こり」(43.4%)、「頭痛」(43.2%)、「寝不足」(41.5%)がトップ3で並んだ。次いで、「疲れ目」(35.8%)、「腰痛」(35.8%)が同じ割合で続いた=図表2参照。
ところが、実際にその症状に悩まされた人が「生産性を下げる」と思った比率と、その症状に悩まされたことのない人が「生産性を下げる」と思った比率を比べると、「頭痛」(71.6%)、「寝不足」(67.0%)、「下痢」(60.6%)、「腰痛」(60.3%)、「疲れ目」(59.8%)が高い割合でトップ5となった。「肩・首こり」(54.3%)はさほどでもなく、実際の経験者の中では「頭痛」や「寝不足」が一番苦しくて、かなり高い割合で仕事の生産性を下げているわけだ。
アンケート調査のフリーコメントでも、「頭痛」や「寝不足」のつらさを訴える声が多かった。
「疲れ目や肩こりなどからくる頭痛のせいで、どれだけ生産性が下がっただろう...と思うほどのひどさ。職業柄仕方ないとは思うものの、頭痛を経験したことがない人が羨ましい」(50代、自営業)
「PCと一日中向き合い、頭を使う仕事なので睡眠不足による眠気は生産性を著しく下げる。眠気のある状態で作業しても、後で見直すと抜けがあったり、今一つ詰めが甘かったり、品質が悪い。30分程度の昼寝ができるシステムを採り入れてもらいたいと思うことがあった」(40代、公務員)
ほかにもこんな症状に悩んでいる人が多かった。
「1時間に5分くらいの休憩は許されてはいるが、実際は業務中で1時間ごとにきっちり席を立てる訳でもない。休憩したいのを我慢していると、肩こりや目の疲れ、足のむくみと身体に疲労を感じ集中力が下がってミスが多くなる。もう少し職場が休憩しやすい雰囲気になってほしいと感じる」(40代、パート)
「生理中は、トイレになかなか行けず、集中力も落ちる」(40代、パート)
「花粉症の時期は本当に辛い。日本全体で考えると、生産性が落ち込み、経済効果にも影響すると思う。もっと国民的病として扱うべき。年度末近くは忙しくて、薬をもらいに行くのも容易ではない」(40代、派遣社員)
スマホ見すぎ「疲れ目」こそ要注意の難敵
J-CASTニュース会社ウォッチ編集部の取材に応じた「しゅふJOB総研」の川上敬太郎所長は、こう語る。
「仕事の生産性向上が言われる一方で、どうすればよいのかわからないという声も聞きます。考え方の一つとして、生産性が下がらないよう従業員の健康状態を保つことが大切です。働く主婦層に『仕事中に悩まされたことがある症状』を聞くと、実に7割以上の人が『肩・首こり』をあげました。2位の『疲れ目』に20ポイント以上の差をつけています。
次に『仕事の生産性を著しく下げると思う症状は?』と聞くと、やはり『肩・首こり』が最も多く4割を超えたものの、実際に『肩・首こり』を経験した人が7割もいるのに、3割も少なくなっています。そこで、その症状の経験者だけに絞って、生産性を著しく下げると思っている比率を調べると、『肩・首こり』は54.3%にとどまりました。『肩・首こり』の経験者の半数弱は、あまり生産性を下げないとみているのです。
ところが、『頭痛』では経験者の7割以上が生産性を著しく下げると答えています。頭痛は、仕事の生産性低下に最も直結しやすい症状のようです」
「頭痛」こそ、働く女性にとっても会社側にとっても、一番気をつけなくてはならない症状というわけだ。ところで、川上さんはもうひとつ「疲れ目」が「隠れた難敵」と指摘する。川上さんは、仕事中にその症状に悩んだことがない人と悩んだことがある人とを比較した図表3に注目し、その差をグラフにしところ、差が一番大きかったのが「疲れ目」だった=図表4。川上さんが説明する。
「最も大きい差が見られたのは『疲れ目』でした。実際に経験した人の方が生産性を下げると思う比率が高くなるのは、どの症状にも言えることですが、『疲れ目』は経験者と未経験者の落差が大きい点で、『隠れた難敵』の代表格だと思います。未経験者が軽くみている症状だからです。いまは症状を感じなくても、実際に『疲れ目』になると、『こんなに辛いのか!』とショックが大きくなる可能性があります。
スマホ中毒になる人が非常に多くなり、寝ている時以外、目は休まっていないひとが増えています。そして朝目覚めるとまたすぐに目の酷使が始まります。自分が考えている以上に目の疲れが蓄積しており、仕事中に疲れ目を自覚する頃には、すでに疲れの度合いがかなり進行している状態かもしれません」
川上さんは、
「『疲れ目』に限らず、すべての症状は『隠れた難敵』になりうると考えてください。図表④を見ると、どの症状も経験者と未経験者とで大きな差があることがわかります。つまり、実際に経験して初めて生産性が著しく下がることに気づくのです。働き方改革で残業が減らしても、生産性を高められなければ給与が下がってしまうことも考えられます。また、せっかく休みが増えても、不健康だと休みを楽しむこともできなくなります。働き方改革を成功させる一丁目一番地は健康管理であることを、働くすべての人が認識する必要があります」
と、アドバイスした。
なお調査は、2018年11月19日~28日にインターネットを通じて、求人サイト「しゅふJOBパート」に登録している女性528人を対象に実施した。(福田和郎)