ドル円相場、実質史上最小の週間レンジ その意味するところを探る(志摩力男)

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

「AI」が見るマーケットの動き

   そして、(3)AIの影響ですが、最近はこれが最も大きいと感じます。旧来からのトレーダーは、チャートを見たときにトレンドを探します。トレンドのあるとき、トレンドにそってポジションを持ちます。

   ところが、最近のIT技術者にはマーケットは違うように見えるのだと思います。おそらく地震計の針の動きのように、行っては戻る、戻っては行くを繰り返しているだけに見えているのでしょう。

   これが最近のマーケット感覚かもしれません。

   よってAIのモデルは、マーケットが下がると押し目買いし、マーケットが上昇すると吹き値売り、もしくはショート転、それを無限に繰り返しているのではないでしょうか。ただ、下がっているときに買い下がっているだけだと、どこかで損失が取り返しのつかないところまで膨らむかもしれません。そこで、損切りポイントを置くのですが、コンピューターで最適化した損切りポイントに、多くのプログラムの損切りポイントが集中することになります。

   損切りをかけるときには集中し、一気に値が飛んでしまうということが起こりそうです。

   すなわち、売買の両サイドに通常オーダー、すなわち下サイドには買いオーダー、上には売りオーダーが並び、ちょっとやそっとでは抜けきれないほど厚みが増すことになりますが、いったん売り崩されると、腰砕けになりやすいという特長があります。

   今後の為替トレーディングは、こうしたAIの特長を理解して、それを逆手に取っていく戦法が望ましいと思います。つまり、低い変動率と高い変動率が交互にやってくるのです。円高、円安に賭けるのではなく、動き出すのか、膠着するのか、「変動率」に賭ける感覚が重要になってきます。

   今は為替証拠金業者の中にも、オプション取引ができるところが出てきています。そうしたところを利用して、膠着が予想されるときにはオプションを売る、膠着から大きく動き出しそうな予兆があるときは、オプションを買って、それに備える。そうしたストラテジーが有効になります。(志摩力男)

志摩力男(しま・りきお)
トレーダー
慶応大学経済学部卒。ゴールドマン・サックス、ドイツ証券など大手金融機関でプロップトレーダー、その後香港でマクロヘッジファンドマネジャー。独立後も、世界各地の有力トレーダーと交流し、現役トレーダーとして活躍中。
最近はトレーディング以外にも、メルマガやセミナー、講演会などで個人投資家をサポートする活動を開始。週刊東洋経済やマネーポストなど、ビジネス・マネー関連メディアにも寄稿する。
公式サイトはこちら
姉妹サイト