ドル円相場、実質史上最小の週間レンジ その意味するところを探る(志摩力男)

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   2019年2月18~22日週のドル円相場のレンジは、高値で1ドル110.95円、安値110.39円と、わずか56銭レンジ(0.51%)でした。

   110.39円がトレードされたのが月曜早朝シドニー市場だったので、東京市場オープン以降で考えると、レンジは110.95円~110.45円のわずか50銭のレンジ(0.45%)と驚異的な狭さでした。

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ドル円が最も動かなかったのは2012年1月

   自分自身の記憶でも、これだけドル円の週間レンジが小さかったことはなく、1971年以降のドル円相場を調べてみましたが、興味深い内容がわかってきました。

   1970~80年代には、ほとんど動かない週が結構あったのですが、現在のマーケットと状況がかなり違うとみなし、データは1990年以降に絞りました。下記の表がドル円相場の過去最小週間レンジのランキングです。

週間レンジが最も狭かったのは2012年1月9~13日だった
週間レンジが最も狭かったのは2012年1月9~13日だった

   2012年1月9~13日週は、本当に動かなかった記憶があります。この年の秋にアベノミクス相場が始まるのですが、円の最高値近辺での揉み合いがずいぶん長く続きました。円高トレンドだったのでしょうが、ファンダメンタルズ的に円上昇の限界点に来ていたからかもしれません。

   双方の力が拮抗して動かなかったのでしょう。

   1994年12月は、95年4月の80円割れという超円高相場の直前です。あの急落のほんの数か月前に、これほどタイトな、のんびりした相場があったとは、今は意外に感じられます。ヘッジコストを削減したい一部の輸出企業が、その頃徐々に広まった「イン・ザ・マネー・ノックアウト・オプション」を多用した頃でした。

   詳しい説明は除きますが、95円前後にノックアウトレベル(停止条件の価格)を設定したケースが多く、95円に近づくと大量のドルの買い戻し、戻ったところで売り戻しというオペレーションが起こり、ドル円は102円から97円前後という狭いレンジに押し込まれました(1994年の年間レンジは113.60~96.12円)。すなわち、1994年後半の狭いレンジは「イン・ザ・マネー・ノックアウト・オプション」の影響でした。

   1ドル95円以下のノックアウトが1995年2月後半にトリガーすると、あっという間に円急騰の大荒れ相場となりました。

※「イン・ザ・マネー・ノックアウト・オプション」
オプションがイン・ザ・マネー、すなわち利益が出ている状態のところに、ノックアウト=停止条件を設定するオプションのこと。通常のオプションの場合、価格がイン・ザ・マネーに行けば行くほど利益が高まるが、このオプションの場合、停止条件に達するとオプションが消滅してしまう。つまり、多大な利益が一瞬にして消えてしまうリスクを内包している。

志摩力男(しま・りきお)
トレーダー
慶応大学経済学部卒。ゴールドマン・サックス、ドイツ証券など大手金融機関でプロップトレーダー、その後香港でマクロヘッジファンドマネジャー。独立後も、世界各地の有力トレーダーと交流し、現役トレーダーとして活躍中。
最近はトレーディング以外にも、メルマガやセミナー、講演会などで個人投資家をサポートする活動を開始。週刊東洋経済やマネーポストなど、ビジネス・マネー関連メディアにも寄稿する。
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