欧米型の中途採用が広がると学生ピンチに
遠藤さんが、学生の就活にいちばん影響を与えると指摘するのが、三つ目の「企業の中途採用拡大」だ。現在、中途採用市場は大きく盛り上がっている。転職した人の賃金を見ると、前職に比べて1割以上増加した人の割合が2018年には30.0%に達し、6年連続で上昇していることだ=図表2参照。この30%という数値は、リーマン・ショック(2008年)前の水準を大きく上回っている。企業が中途採用に力を入れて、待遇をかなり引き上げてでも優秀な人材を確保しようと必死になっていることがわかる。
遠藤さんはこう語る。
「これは日本の労働市場が、新卒の一括採用、終身雇用、年功序列型賃金という従来型の慣行が崩れ、欧米型に近づいていることを示しています。欧米では、新卒が一般の労働者と同じ土俵で戦い、職を獲得する必要があります。当然、新卒は一部のエリート大学出身者を除き、職務経験の差から採用されないことが多く、これが欧米での若者の失業率の高さとなって表れています。だから、欧米の新卒者は、インターンシップなどを通じて技能を磨き、徐々に企業に雇われていくのです」
欧米型の中途採用が広がると、どうなるか。企業は採用に当たって、より学生の持つ技能に注目するようになる。即戦力になる若者を求めるからだ。転職が一般化すれば、従業員を育てても転職されたら研修・教育費がムダになるので、新卒を一括採用して育成しようという企業側の意欲が弱まる。結局、企業は中途採用市場で優れた人材を確保するほうが効率的になり、新卒一括採用という慣行が崩れることになる。