相場で注意すべきアノマリー(経験則)の一つに、「キリのいい数字(ラウンドナンバー)」の効果と呼ばれるものがある。
「キリのいい数字」とは、ドル円相場の1ドル113.00円や日経平均株価の2万2000円などが当てはまる。112.45円や、2万2240円などは該当しない。
「キリのいい数字」の効果とは?
「キリのいい数字」の効果とは、簡潔にいえば、その価格帯には注文が集中しやすく、価格が吸い込まれるように、その価格帯に収束するという経験則をいう。 たとえば、1ドル112円台半ばからドル円相場が上昇して、112円90円まで上昇したとする。このときキリのいい価格である、113円付近までさらに上昇する可能性が高くなるというものだ。
なぜ、キリのいい数字の効果は発生するのだろうか。ひとつは市場参加者の心理的な要因といわれている。A社の株価は、現在1070円。このとき、「1000円まで下がったら買おうかな」と考えたりする。
このことは、買うときに限らず、売るときにも当てはまる。買っていた株を「2000円まで上がったし、とりあえず売って利益確定しようかな」と考えたり、「B社株を買ったが、1500円まで下がってしまったので損切りしよう」と考えたりする、といった具合だ。
とくに、あらかじめ決めた価格で株を買ったり、決済したりするための仕組みである「指値注文」と呼ばれる注文方法に、このキリのいい数字の効果は影響を与えやすい。
前出の例を、もう一度考えてみよう。1ドル112円半ばだったドル円相場は、上昇トレンドが発生して、1ドル112円90銭まで上昇した。このとき、112円半ばで買っていたトレーダーは、「113円まで上がったら、とりあえず決済して利益確定しよう」と考えるかもしれないし、逆にドル円を売っていたトレーダーは、「113円まで上がってしまったら、あきらめて損切りしよう」と考えるかもしれない。
とくに「損切りがたまりやすい価格帯」という考え方は重要だ。一般的に、相場は(短期的には)ゼロサムゲームである。つまり、もし誰かが相場で利益を上げることができたのなら、他の誰かがその分を損しているという意味。相場は奪い合いのゲームである。
だから、損切りの注文がたまりやすい価格帯を意識することは、まさにその「奪い合い」に勝つための一歩となるのではないだろうか。