労働者の「リカレント教育」や「学び直し」の機運が高まっている。
海外では、労働者の「学び直し」はめずらしくない。国際機関では経済協力開発機構(OECD)が1970年代から、リカレント教育(生涯教育、回帰教育、循環教育)を推進。また、国際労働機関(ILO)が1974年の総会で「有給教育訓練休暇」制度を労働者の権利として保障し、加盟各国に政策の策定・運用を求めている。しかし、日本では産業界の反応が鈍く、その実施率が非常に低いことが指摘されていた。
「学び直し」経験者と考えている人で50%超
安倍晋三首相は2017年9月の衆議院解散時の記者会見で、「生産性革命」「人づくり革命」を掲げ、リカレント教育の充実を訴えた。「働き方改革」の浸透とともに、残業に充てていた時間を「学び直し」に有効活用しようという。
その一方で、少子高齢化に伴う労働力不足と生産性の維持・向上の課題に企業は、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)などのデジタル技術の配備を進めている。働き方改革では、それらを使ったオペレーションを生かせる、労働者のスキルアップが求められおり、技術の習得などに充てようという機運は高まりつつある。
そういった「リカレント教育」や「学び直し」への関心の高まりを受けて、 第一生命保険のシンクタンク、第一生命経済研究所は、全国の民間企業で働く正社員2000人(20~59歳の男女1000人ずつ。2018年3月、インターネットで実施)を対象に、「学び直しの実態と意識」についての調査を2019年2月8日に発表した。
調査によると、学び直しの「経験者」は25.9%、「将来行いたいと考えている」人が27.7%だった。合わせて50%を超え、労働者の意欲が高まっていることをうかがわせている。
この調査では、学び直しの方法を聞いているが、上位3位までは「本などによる自学・自習」(49.6%)「勤め先の人材育成制度・取組利用」(30.6%)「通信教育」(26.4%)で、米国などでリカレント教育の主流である「大学・大学院への定期的な通学」は、わずか7.6%にとどまった。
第一生命経済研究所は、正社員らの学び直しの姿勢は「会社から求められる能力を超えて、自分の職業生活において将来どのような知識や技能が必要かを主体的に考え、そうした能力を得ようとする動き」であり、こうしたニーズに本格的に応えられるようになるためには、大学など教育機関などと産業側が協力しての学び直しについての環境整備が求められている」と、指摘する。
日本人の社会人学生比率は1.9%
一方、内閣府が18年6~7月に全国の18歳以上の3000人に聴取した調査(1710人が回答)では、4割近くが社会人になった後、大学などで「学び直しをした(している)」か、「してみたい」と回答。学び直しへの関心の高さがうかがえた。
OECDの統計(OECD Stat Extracts 2012)によると、加盟各国の教育状況では大学入学者のうち25歳以上の各国平均が約20%に達し、社会人学生も相当数含まれているという。
ところが、日本人の社会人学生比率は、1.9%ときわめて低いレベルにとどまっており、安倍首相の私的諮問機関「教育再生実行会議」でも、大学・大学院の学び直し機能の強化が提言されている。