大規模小売店法と同じ「ニオイ」が漂う
第二の見直しポイントは、「漁業権の優先規定廃止」だ。「漁業権の優先規定」とは、一定の水面(主に岸から3~5キロメートル)において、漁船漁業、養殖業などを排他的に営む権利を指す。
つまり、現在に漁業を営む事業者に対する既得権益であり、誰でもが自由に漁業を行うことができなくなっている。この「漁業権の優先規定」を廃止することで、漁業への新規参入、特に企業の新規参入を促そうというものだ。
しかし、この漁業権の優先規定廃止に対して漁業関係者は、
「生活基盤の漁業規定を廃止することは、漁業で生活が成り立たなくなる」
「企業が漁業に新規参入することで、個人の漁業者は廃業せざるを得なくなる」
などと強い反対の声があがった。
それでも政府は「漁業を行う経営体を強くする」ことで、日本の漁業を復活させるという選択をしたのだ。
確かに、日本の漁業は多くの個人漁業者による沿岸漁業が中心で、老朽化した漁船を使い、生産性の低い漁業を行っているのが実態だ。しかし、大規模小売店(スーパー)が地元商店街を滅ぼしたように、一概には、企業など強い経営体が漁業に参入することが、漁業を本当に復活させることになるとは言い切れないのではないだろうか。
その一方で、政府は漁業権の優先規定を廃止した後の漁業権の割当てについて、「適切に判断する」としている。優先規定を廃止しても、既得権に配慮した漁業権の割当てを行えば、新規参入は促されないだろう。
養殖業も含め、漁業の生産性向上を図り、漁業者の所得が向上して、新規就業者が増加する方策のあり方が、日本の漁業復活のカギとなりそうだ。(鷲尾香一)