「ゆるブラック」は行政機関、社団法人、学校法人に
一方、平均の左下に存在している業種が「厳しい仕事が少なく、(厳しい残業に)当たっても成長できない」業種だ。特に近似曲線の下にある、インフラ、運輸、メーカー・商社、行政機関、社団法人、学校法人は20代で大きく成長できる可能性が低いことが示唆されている。ハードワークを経験した人が少なく、経験しても「育った」と感じる人も少ない結果となった。「ゆるブラック企業」はこうした業種に多い可能性があるというわけだ。
では、なぜこれらの業種に「ゆるブラック企業」が多いのだろうか。古屋さんは、
「かなりいろいろな業種が混在しているため、その理由は一概には言えませんが、あえて共通点を挙げれば、新卒が総合職採用メインでジョブローテーションがあり、短期間でいろいろなポストを回されることがあるでしょう。ひとつのプロジェクトで根を詰めて、というわけではありませんから、専門性を持ちたい、将来第一人者になりたい、と考えている若手にとっては魅力的でない環境と言えるかもしれません」
という。
古屋さんは若い人に、こうアドバイスしている。
「日本の場合、初めての職業には、『仕事である』ということと合わせて、『学びの空間』としての性質があると思います。アメリカなどと異なり、多くの学生が職業経験を経ずに入社しますから、初期の企業で職業人として学ぶことが多いのです。会社の規模や給与、労働時間など数字で見えることも重要ですが、それに加えて、その企業が提供できる『経験』や『チャンス』に注目した選択をすることが、安定したキャリアづくりへの近道だと思います。
低賃金・悪条件で、意味のない『修羅場経験』をさせる企業は駆逐されると思います。今回のデータでは、適正な環境・待遇を用意しつつ『経験』という形で、キャリアを作っていくうえでの重要な資産を若者に提供できている企業が一定数存在していることを表しています。貴重な職業経験を積める企業を見つけてください。そろそろ、『ブラックかホワイトか』という二項対立から一歩進む段階なのかもしれません。企業と個人が依存関係ではなく、相互に得るものを最大化するような社会を実現したいですね」
(福田和郎)