「自分の成長につながる修羅場経験」が若手に必要
古屋さんによると、日本の就活システムでは、スキルを持っていない学生が企業とマッチングする。企業は学生にスキルやパフォーマンスを期待しているわけではなく、可能性を求めて採用するから、職場で上司や先輩が実務を指導しながら教育していく。だから、特に20代が成長するためには、『修羅場』や『厳しい場面を乗り切った成功体験』が重要だと語られることが多い。もちろん、単なるハードワークではなく、振り返って「あの仕事をしてよかった」と思えるような経験だ。こうした経験や成長が得られればよいが、得られない企業が「ゆるブラック企業」と呼ばれることになったというわけだ。
そこで古屋さんはまず、「自分の成長につながる修羅場経験」をすることができる企業とはどういった企業なのかを調べることから、逆に「ゆるブラック企業」を浮き彫りにする方法をとった。「自分の成長につながる修羅場経験」ができない企業こそ「ゆるブラック企業」というわけだ。
調査には、Vorkersに蓄積された「社員クチコミデータ」を使った。20~29歳の6万8313人が自分の職場について詳細に回答したもので、「残業時間」や「成長環境の度合い」までわかる。「修羅場」については、月残業時間の20代平均が35.6時間なので、月60時間以上の職場とした。「成長」については、成長環境を5.0点満点で4.0点(よい)、5.0点(非常によい)などと評価しているので、4.0点以上の企業を「20代成長環境スコアが高い」と判断した。
その結果、20代全体のうち、月残業時間が60時間以上の人が20.2%いた。そして、「月60時間以上の残業」をして、なおかつ「20代成長環境スコア」が4.0よりも高い人が8.3%いた。この人たちこそ「自分の成長につながる修羅場経験」をした者として分析の対象にした。ちなみに、「20代成長環境スコア」が4.0以上の人は20代全体では32.6%しかいなかったが、「月残業時間が60時間以上の人」の中では41.1%もいた。つまり、「修羅場」経験を積んだ人のほうが成長する割合が高く、調査の方向性は間違っていないわけだ。