グランド・スラムを制した女子は別れを選ぶ?
今回のコーチ契約解消は、アジア勢初の世界1位に就いた大坂選手がより高いレベルを目指すための選択で、大坂選手陣営は以前からコーチ交代を検討していたとも報じられています。
じつは、トップに登り詰めた選手がコーチ契約を解消することはめずらしくありません。
2018年の全仏を制したシモナ・ハレプ選手と、全英を制したアンゲリク・ケルバー選手は、二人ともチャンピオンになった後にコーチと別れています。大坂選手を含めると、過去1年間のグランド・スラムを制した女子選手は全員、その後にコーチと別れていることになります。さらなる頂を目指すうえで、コーチの交代は「あり得る」選択なのでしょう。
また、一流テニス選手のコーチの報酬はさほど高くなく、遠征続きで家族になかなか会えないなど苦労も多いそうです。
そう考えると、今回のタイミングはバイン氏にとっては「グッド・タイミング」と言えるのではないでしょうか。初めての教え子を頂点まで導き、自身も最優秀コーチに選ばれる。指導者としてはおそらく「最高値」が付くタイミングで、今なら「引く手尼手」のはずです。有利な立場で契約交渉ができるでしょう。
「別れのタイミング」としてはいい選択だな、と思わず感心してしまいました。
実際、バイン氏もSNSで、大坂選手に感謝のことばを贈っています。
Thank you Naomi.
(ありがとう、なおみ)
I wish you nothing but the best as well.
(私もあなたの成功を願っている)
What a ride that was.
(すごい道のりだった)
Thank you for letting me be part of this.
(その一部に関わらせてくれたことに感謝している)
では、今週の「ニュースな英語」を。バイン氏のコメントから、「I wish you nothing but the best as well」を取り上げます。「nothing but~」は「~以外は何もない」という慣用句で、「あなたにとって『best』(最善)以外は望まない」という意味になります。
I wish nothing but the best for you
(あなたの成功を心から祈っている)
We wish you nothing but the best for your future
(我々は、あなたの幸せな将来を心から祈っている)
ドロドロの愛憎劇ではなく、感謝のことばを贈り合う、すがすがしい「別れ」に拍手を送りたくなりました。世界中の多くの人が、大坂選手とバイン氏のますますの活躍を心から祈っていることでしょう。(井津川倫子)