一番早い大阪府は「社会人の逸材」を狙う
じつは、いちばん早く職員採用の改革に取り組んだのは大阪府だった。2015年度から4種類ある職員試験(大学卒程度、高校卒程度、社会人、府警察職員)のうち、行政職の「大学卒程度」「社会人」の2つで、一般教養と専門知識をやめ、SPI3だけにした。その代わり、2次試験では面接を3回、3次試験では面接を2回と、みっちり人物を見極める。
取材に応じた大阪府人事委員会事務局の担当者はこう語った。
「公務員試験の対策をしていない、民間会社を受ける人からも幅広い人材を集めるのが目的です。特に、これまでは社会人のハードルが高く、優秀な人材がなかなか来てくれませんでした。この試験を始めて4年ですが、いい人が入ってきてくれていると思います」
京都府でも2017年から始めているが、大阪府と違って、一部だけの導入だ。導入したのは「大学卒程度」の行政職。「ⅠA」と「ⅠB」に分かれており、「ⅠA」は従来どおり1次試験で教養試験や専門試験を行なうが、「ⅠB」だけ教養試験に代えてSPI3を、専門試験に代えて「自己アピール試験」を行なう。自己アピール試験とは、学生時代の部活動などを文章に書いたり、面接で訴えたりする。受験者は、どちらでも好きなほうを選べる。
2018年度の採用結果を見ると、「ⅠA」「ⅠB」を合わせ70人募集のところ、「ⅠA」では300人が受験、111人が合格したが(合格率37%)、「ⅠB」では88人が受験、6人が合格(同7%)という結果だった。「ⅠB」の方が試験は簡単そうだったが、合格率ははるかに低かったのだ。
なぜ、これまでどおりの試験も残したのか。京都府人事委員会事務局の担当者は取材に、こう語った。
「幅広い人材を求める中で、これまでどおり公務員を目指す人の枠も残そうと考えました。民間のほうが公務員より採用が早いので、優秀な人材をとられているのが現状です。民間を目指す人で公務員に少しでも興味がある人が受けられるようにしたのです。従来型の公務員試験では、金太郎飴みたいな人ばかりになりますから、大学の一芸試験のやりかたを併用することにしました」
しかし、せっかくの「ⅠB」の合格率は芳しくなかった。担当者は、
「まあ、そういうバイタリティーあふれる人がたくさんいるわけでもありませんし......」
と語るのだった。