「子育てとの両立が困難」の定説はウソだった?
こうした「管理職=子育て困難説」はかなり広がっているが、本当だろうか。パーソル総合研究所の調査では、「定説」をひっくり返す意外な結果が出た。
砂川さんが説明する。
「子育てが両立困難の主な要因であれば、子どもがいる女性は子どもがいない女性よりも管理職志向が低くなると考えられます。しかし、今回の調査データで、結婚しているかいないか、子どもがいるかいないか、家庭の状況別に管理職志向を聞くと、『未婚・子なし』の女性のほうが管理職志向が低く、『既婚・子あり』の女性のほうが管理職志向が高い傾向が見られたのです」
具体的には、「未婚・子なし」女性の「管理職志向」が13.5%、「既婚・子なし」女性が19.4%だったのに対し、「既婚・子あり」女性は25.0%と、一番高かったのだ=図表3参照。子育てを抱え、仕事との両立が一番難しいはずの女性になぜ、管理職になりたがる人が多いのだろうか。
砂川さんはこう語る。
「日本では、いまだなお第1子出産を機に働く女性の約半数が離職しています。正社員の女性でも3分の1が辞めている状態です。そんななかで、もともと管理職志向が高かった女性が、出産後も正社員として働き続けていることも考えられます。いずれにせよ、未婚や子どものいない女性でも管理職志向が低いわけですから、しばしば言われる『家庭との両立困難』という理由は、深掘りする必要があります。管理職になりたくない女性にとって、それは表面的な断り文句であり、じつのところは長時間拘束されて過大な責任を負担する旧来型の管理職のあり方に疑問を持っているのかもしれません」