「先日はありがとうございました(^^)」「ぜひ、よろしくお願い致しま~す(^0^)ノ」「ご迷惑をおかけしました(m(*- -*)m)」......。こんな絵文字(顔文字)入りのビジネスメールがきたらどう思うだろうか?
「失礼だ」「ビジネスマナーを知らないな」と不快に思う人が多いのではないだろうか。
ところが、ビジネスメールで絵文字を使うことに賛成する人が3割、特にビジネスチャットでは6割の人がOKという調査結果がまとまった。「今日の常識は明日の非常識」(ドラッガーの金言)と言われるほど変化が激しいのがビジネス界だが、いったいどうなっているのか。
「ビジネスに絵文字は失礼」は過去の常識?
調査をまとめたのは、企業にタスク管理やプロジェクト管理ツールを提供している株式会社「ヌーラボ」(福岡市)。全国の20代~60代の男女1009人を対象にアンケートを実施。「ビジネスコミュニケーションにおける『絵文字』の使用に関する意識調査」を、2018年12月26日に発表した。
その結果、ビジネスメールで絵文字を使用することについて、「使用すべきでない」(29.6%)より、「使用すべきだ」(31.9%)が上回った。「どちらでもない」は38.5%だった=図表1参照。
最近はビジネスチャットを使う企業が増えているが、ビジネスチャットでの絵文字の使用について聞くと、「使用すべきだ」がグンと増えて57.7%に達した。「どちらでもない」が31.2%で、「使用すべきでない」はわずか11.1%しかいなかった=図表2参照。ビジネスチャットでは、積極的に絵文字を活用しようという人が6割もいるわけだ。
どうしてこれほど、絵文字に賛成する人が多いのか。「ビジネスメールでは絵文字はご法度」というマナーは、「昨日までの常識」になってしまったのか。J-CASTニュース会社ウォッチ編集部の取材に応じた「ヌーラボ」広報担当の五十川慈(いそがわ・めぐみ)さんはこう語った。
「正直、私自身も意外な結果に驚いています。『絵文字など失礼だ』と8割以上の人が使用に反対すると思っていましたから。これだけ賛成者が多い理由の一つは、もともとアンケートをした人々が、弊社が提供しているプロジェクトやスケジュール管理システムである『Backlog』のユーザーだったこともあると思います。これは、インターネットを通じて社内やお客さまを巻き込んで互いに課題を連絡し合いますから、チャットっぽいシステムです。ビジネスチャットのフレンドリーな雰囲気に慣れている人が多いからではないでしょうか」
謝罪した後に絵文字メールがくると励まされる
最近、社内外の連絡にビジネスチャットを導入する企業が増えている。チャットの場合、パソコンだけでなくスマートフォンを使って出先からも連絡できる。よけいな挨拶文がなく単刀直入に要件が伝えられるし、すぐに返信がくるので時間の節約になる。時系列でやり取りが表示され、社内外のメンバーやプロジェクトごとにグループをつくり、連絡し合うことができる。
五十川さんは、
「今回の調査で、ビジネスチャットに絵文字を使うべきだという人が非常に多いのは、前置きの挨拶がないので、絵文字で表現を和らげて親しみを持たせようと考えているのだと思います。ビジネスチャットが広がれば、メールに絵文字を入れる人はもっと増えるのではないでしょうか」
と説明した。
アンケート調査で絵文字に賛成した人にはこんな声があった。
「ふだんは絵文字を使わない社外の方とのやりとりで、私がミスをして謝罪を含めたメッセージを送った際に、励ましの言葉と絵文字を送ってくれた。この方との仕事はもっと頑張りたいと思えた」(マーケター・プランナー・30歳代)
「少しやり取りをした後、先輩から簡単な絵文字でくると、『よく思ってくれているのかな』と安心する」(エンジニア・20歳代)
「クライアントが文末につけてくれた絵文字でホッとしたことが何度もある」。(ディレクター・マネージャー・40歳代)
「『あの絵文字は最高だった』という世間話が増えることで、場の雰囲気を和らげる効果がある」(システムエンジニア・30歳代)
「絵文字で文字から見えない感情を察することができるし、こちらの感情も伝えられる」(コンサルタント・30歳代)
このようにホッとする効果だけでなく、次のような意外な効果も。
「絵文字には色がついているので、文を目立たせたいときに使っています」(システムエンジニア・20歳代)
「時間がない時は、絵文字だけで返信することがあります。もちろん、社内のみで使用していますが」(事務・総務・20歳代)
やはり、ビジネスの場では「失礼だ」と、使用に批判的な意見も多い。
「謝罪関連で絵文字を利用されると、はぐらかされているようでイライラする」(システムエンジニア・30代)
「納期当日になってタスク遅れの連絡があり、その報告に絵文字が多用されていてイラッとした」(ディレクター・マネージャー・30代)
「絵文字は使わないので絵文字みっしりのメッセージが届くと、合わせるのが面倒」(カスタマーサポート・30代)
「絵文字を選ぶのに時間がかかっている社員を見た。そんな暇があるなら早くコメントをすればいいのにと思う」(システムエンジニア・30代)
スマホ世代の20代はガラケー文化の絵文字に冷ややか
今回の調査で興味深いのは、年代によって絵文字の使用の賛否に違いがみられたことだ。50代、60代と年齢が高くなるほど使用に反対する割合が高くなるのは当然だが、一番若い20歳代でも冷ややかな反応が多かった。その結果、賛成する比率が最も高いのは、30代前半~後半(約50~52%)で半数以上に達する。
しかし、20代前半は約37%と、50代前半とほぼ同じという意外な結果が出た=図表3参照。24歳以下の若者は、年配者同様にビジネスの場で絵文字を使うのはマナーに反すると考えているのだろうか。
五十川さんは笑いながら、こう説明した。
「じつはスマホネイティブの20代前半の人は、メールの文章の中に絵文字を入れるのは『古くさい、ダサい、オッサンくさい』と違和感を持っているのです。絵文字は30~40代の人が使っていたガラケー文化ですからね。携帯電話のキャリアメールを用いて顔文字や絵文字、デコメを利用していた世代と、LINEなどのコミュニケーションアプリでスタンプを使っている世代のギャップがよく表れています。絵文字に関心があるかを聞くと、最も関心がなかったのも24歳以下でした」
アンケートのフリーコメントの中には24歳以下の人の「絵文字入りのメールがくると、この文章を書いている人は絶対オジサンだと思う」といった意見が複数あったという。
それでは、20代前半の若い人は絵文字ではなく、どんなメールを送るのだろうか。五十川さんによると、LINEのスタンプが使えないメールでは、GIF(グラフィックス・インターチェンジ・フォーマット)のアニメーションのフリー素材を使って、お願いポーズとか、ランチに行こうポーズとか、自分でお気に入りの画像を作るそうだ。この世代が増えていくと、ビジネスメールの世界もカラフルで華やかになりそうだ。(福田和郎)