先日、ネットニュースで関西弁を話す外国人の方のコラムが載っていました。
幼少の頃から関西で育ち、東京で働く現在も関西弁を当たり前に使っていたところ、後輩から「関西弁は怖いから使わないでください」と言われ、ショックだったそうです。読みながら、私は過去のある出来事を思い出しました。
初めての土地でストレス
昔、ある企業から新しく入社した社員の言葉遣いを直してほしいと依頼を受けました。
来客対応が多い職場と聞きましたので私は、敬語の使い分けやビジネス表現に問題があるのかと思ったのですが、社長は「方言を直してほしい」と言うのです。
その方はご家族の転勤で東京へ来たばかり。長く関西方面にお住まいだったので、アクセントの位置や単語が、関東と少し異なるのです。
私は、方言は大切な文化だと思っているので、標準語を強制することには反対です。ご自分の意志で方言を使わないというならまだしも、社長のように「標準語で話さなければ仕事をさせない」というのはおかしな話です。
まして、この方は転勤してきたばかりで、初めての土地での生活に慣れるだけでもストレスを感じているはず。追い討ちをかけるように「標準語で話せ」と強制しようものなら、ストレスで体調を崩す可能性すらあります。
社長には、そういうことであれば、お受けできないとお断りしました。当時は「ハラスメント」という言葉はありませんでしたが、今なら「方言ハラスメント」でしょうか。
目指すは「お国自慢ができる」職場
私も社会人になりたての頃、1年半ほど大阪に住みました。大阪の同僚には「関西弁っぽくなってきたけど、やっぱり変!」と言われ、東京の友人には「関西人っぽくなったねぇ」と言われ、私としてはどっちつかずの自分もおもしろく楽しい時間でした。
自分でも「アクセントが変だな」と思うことはありましたが、上司から関西弁で話せと強制されたことはありませんでした。
さて、地方の研修では受講者の方から、
「お客様との会話は標準語がよいのでしょうか?」
「方言を使わないと、よそよそしく感じられてしまうのですが」
などのご質問をいただきます。
私の答えは、「方言でお客様との距離が縮まり、いい関係が築けるのであればどんどん使ってください」と言います。
「その土地の言葉を使うべき」という思い込みは捨てて、相手との関係性に合わせて使い分ければいいのです。それぞれが生まれ育った故郷の大切な文化を尊重し、お国自慢し合えるような職場でありたいものです。(篠原あかね)